クールな上司は捜し人〜甘愛を運ぶ幼き想い出
【次の時代へ進む】
月曜日になり、2階で書類を捜していると、
「碧さん!所長室から2人が大きな声で言い合ってるのが聞こえるの!ちょっと来てくれる!」
安藤さんに声を掛けられて下に降りると、何だか騒がしい。
「入りますよ。どうしたんですか?」

2人は立ったまま、お父さんは腕を組み、広大さんは腰に手をあて、険しい顔で私を見た。
「皆心配しています」
「あぁ、すまない。父さん、俺は引かないよ。絶対実現するから」
広大さんが所長室を出ると、お父さんはため息をついて、席に座った。

その日の夜、遅く帰って来た広大さんに話しを聞くと、元々、夜遅くや土日まで対応している体質に疑問を持っていて、変えようと思いながら、きっかけがなかったと。
そんな時に、私と一緒に住んでもすれ違う毎日に、もう待ちきれず、法人化するのをきっかけに、変えることをお父さんに言ったら、反対されたらしい。

これから法人顧客を集客するのに、今までのように、フルタイムで受けてると質が落ちる。時間を決めて、遅くの対応は基本しない。時間外は割り増しで追加報酬を受ける。
システムも導入して、あくまでもこちら側主体にして、職員の負担も減らす方向にしようと提案したみたいだ。

「私は賛成です。ただ、お父さんはやっぱり今までの取引先のことを思って・・・」
「ビジネスだからな。それに税理士法人は沢山ある。質で勝負しないと」
「でも、お父さんにも思いが・・・」
「俺は碧に、母親のような寂しい思いをさせたくない。俺みたいに寂しい思いも。家庭を大切にしたいんだ」
「広大さん・・・」
「それは職員の人生も同じだ」
< 107 / 115 >

この作品をシェア

pagetop