クールな上司は捜し人〜甘愛を運ぶ幼き想い出
私は広大さんの腕の中から離れると、目を見つめた。
「広大さんの気持ちは、十分理解してます。お母さんの身勝手だってことも。ただ、広大さんが産まれた事に、感謝して欲しいんです。だって、私達はこんなに幸せだから」
広大さんの頬に撫でるように手を当てた。
「広大さんを産んでくれたことと、私と広大さんを繋げてくれたことの、お礼を言いたいんです。もし広大さんが許してくれるなら、私だけでも行かせて下さい」

広大さんは、しばらく黙って、口を開いた。
「父さんに、聞いてみてもいいか。一番傷ついたのは父さんだから」
「はい。赤ちゃんのことも伝えてください」
「あぁ、凄く喜ぶよ」

広大さんはお父さんに電話をして、一声目の喜ぶ声が大きかったのか、携帯から耳を外していた。
その後、お母さんの事を確認して、電話を切った。
「お前が良ければ行ってこいって。俺は正直、会うつもりはない。でも、碧を1人で行かせるのも心配だ。一緒に行って、俺は別のところで待ってるよ」
「分かりました。ありがとうございます」
私は広大さんをゆっくりと抱きしめた。

次の日曜日、待ち合わせ場所に行くと、西田さんの横には、1人の女性が立っていた。
やっぱり広大さんは、会わないと言って、近くのカフェで待っている。
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