クールな上司は捜し人〜甘愛を運ぶ幼き想い出
「笠間さんにだけ、言っちゃおうかな・・・私と時東さん、そのぉ・・・深い関係なの」
「えっ?」
「やっぱりほら、付き合ってるってなると、何かと仕事しにくいからって、会社では2人の仲は秘密にしてるの」

やっぱり噂は本当だった。
北川さん達から聞いてたけど、本人から直接聞くと、息苦しくなった。
「ほら、昨日2人で会議室に入って行ったでしょ。たまに、我慢できない時は、会議室で、キス、したりね」
2人のキスシーンが頭に思い浮かび、胸がぎゅっと痛む。
「隠すために冷たくしてても、2人になれば優しいの」
「そ、そうでしたか」
「彼が私と結婚したら、この会社の次期社長かしら。まさか、あなた、彼の出世を妨げることなんて、したくないわよね」
「わ、私は・・・」
「ちょっと優しくされたからって好きになったら、あなたが傷つくだけだからね。あなたの為に、私達の秘密を教えてあげたのよ。それに」
すると、私の方に近づいて来て、耳元で囁いた。
「本気で好きになって彼を誘惑したら、私、絶対にあなたを許さないから」
私を見下ろす冷ややかな目。
「だ、大丈夫ですよ。武郷さんという彼女さんがいるんですから」
「そっ。じゃあ、くれぐれも内密にね。あぁ、広大にも余計な事言うと怒られるから、内緒ね」
不敵に笑いながら、颯爽と歩いて行った。

分かっていたけど、叶わない恋だと断定されると、涙が溢れそうだった。
「笠間さん、武郷さんに何か言われたのか?」
そこに時東さんが通りかかった。
「・・・もしかして、泣いてる?」
「い、いえ、何でもありません」
顔を上げずに「失礼します」すぐにその場を立ち去った。

でも・・・叶わぬ恋でも、それでも時東さんが好き。
恋心を悟られないように気をつけさえすれば・・・
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