クールな上司は捜し人〜甘愛を運ぶ幼き想い出
顔が熱のせいなのか、恥ずかしいからなのか、火照っている。
「まぁ、俺も男だからね」
一瞬、目が合った時、いつもと違う眼差しにドキッとした。
「冗談だよ。動けるか?」
「は、はい」
冗談・・・そっかぁ。そんな冗談、言うような人と思わなかったけど。
「お腹空いただろ?薬も飲まないといけないから。玉子がゆ作ったから、こっちおいで」
「あっ、はい」

ベッドから降りて、歩こうとした時、少しふらついた。
「おっと、大丈夫か?」
「す、すみません」
時東さんに支えられて、鼓動が跳ねる。
もう、これ以上ドキドキすると、熱がまた上がりそう。

そうだ!さっき、こう君の夢見てた時、私、叫んでなかったかなぁ。
「あの、私、寝てた時、何か言ってませんでしたか?」
「何かって?」
「あっ、いえ、何も言ってなかったら大丈夫です」
良かった。目尻が少し濡れてたから、泣いてたと思ったけど・・・

あっ!ここにいて武郷さんと鉢合わせたら、大変じゃない!
この間の武郷さんの目を思い出すだけで、ゾッとする。
「あの、私がここにいると、武郷さんに誤解されるんじゃ・・・」
「どうして?武郷さん関係ないでしょ」

武郷さんからは口止めされてるから、遠回しに言わないと。
「噂で聞いたんですけど・・・婚約者って聞きまして」
「婚約者か・・・確かに、親同士が知り合いで、結婚の話は出ているよ」
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