クールな上司は捜し人〜甘愛を運ぶ幼き想い出
私がベランダから顔を出すと、車から出て、小さく手を振る時東さんが見える。
「しっかり休んで、月曜日に元気な姿を見せてくれよ」
「はいっ」
「じゃあ、また月曜日に。もう、家に入っていいから」
ずっと、見ていたい。家に入りたくない。
「寒いから中に入れ。心配で俺が帰れないだろ」
「はい・・・時東さん、おやすみなさい」
「あぁ、おやすみ」
電話を切って手を振ると、時東さんも手を振っていた。
ベランダの戸を閉め、時東さんが車に乗り込み走り出す。
見えなくなる車に、寂しさが込み上げて来た。
もう、好きが溢れている。

「おはようございます」
月曜日。熱も下がり出勤すると、時東さんはもう席に座っていた。
金曜日のお礼を言わないと・・・
「時東さん、先日はありがとうございました」
声を掛けると、私に目を向けた。
「熱は下がったのか?」
「はい、もう大丈夫です」
「そうか。無理するなよ」
笑顔一つ無く、直ぐに手元の書類を見て、何事も無かったように仕事を始めた。
いつもの時東さんだ。
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