クールな上司は捜し人〜甘愛を運ぶ幼き想い出
「笠間さん?」
私が時東さんを見つめると、涙で潤む私の顔を見て、一瞬、戸惑った顔を見せたけど、真っ直ぐに私を見つめた。
「何故、泣くんだ?」
「それは・・・」
私は、時東さんの目を見つめて、言葉に詰まる。
溜まった涙が、ひとしずく流れた。
「俺のせい、なのか?」
「・・・そう、です」
時東さんは、私を見つめたまま少し間を開けて、
「そうか・・・じゃあ、俺が慰めないといけないね」
私の頬に流れる涙を指で拭うと、そのまま引き寄せて、時東さんの顔が近づく。
静かに目を閉じると、触れた唇が直ぐに離れた。
「・・・これだけじゃ、慰め足りないよな」

優しく何度も離れては重なる唇。
そのうち、唇は離れることなくキスが続くと、唇の間から時東さんの舌が、私の舌に触れた。
『んっ・・・』声にならない息を漏らしながら、びっくりして、思わず後ろに体を引いてしまった。

「・・・嫌、だったか?」
「い、いえ・・・こんな経験初めてで、どうしていいか分からなくて・・・」
恥ずかしくて俯くと、時東さんは優しく微笑み、指で唇をなぞりながら、
「キスだけで我慢しようと思ったけど・・・帰せなくなった」

熱を帯びた瞳で私を見つめ、もう1度私のシートベルトを締めると、車を走らせた。
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