クールな上司は捜し人〜甘愛を運ぶ幼き想い出
『時東税理士事務所』
駅から少し離れた、2階建ての建物に掲げられた看板。
「これから忙しい時期になる。法人化も予定してて、土日は手伝いに来てるんだ」・・・
手を引かれて、建物の中に入った。

ドアを開けると、人は居ない。
「奥だよ」
奥まで歩き、『所長室』のドアを開けると、書籍で囲まれた机に、1人の男性が座っていた。
「父さん、今日は紹介したい人を連れて来たから」
「えっ?」
集中していたのか、入って来たことに気付かなかったお父さん。
眼鏡をかけ、にっこりとした笑顔は、目尻が下がり、広大さんとは正反対のような人だった。

「すまないね。2人で過ごしたかっただろうに」
「ほんとだよ。紹介するよ。碧さんだ」
「初めまして。お付き合い・・・」
あれっ?付き合っているの?
好きと言われて、体の関係も・・・。
でも、付き合ってるって言っていいの?

不安になって、広大さんの方を見ると、
「俺はそのつもりだけど、そうじゃなかったのか?」
「お付き合いしています、笠間 碧です。宜しくお願いします」
目を細めて浴びた冷たい視線に、直ぐに言い直して、自己紹介した。
「碧さん。初めまして。広大が私に彼女を紹介してくれる日が来るなんて、嬉しいよ」
初めて?時東さんなら、沢山付き合った人もいると思うのに。

2人は書類を見ながら、打ち合わせをしていた。
「広大には、このチェックお願いしていいかな?」
「あぁ。碧は、そっちのソファでゆっくりしてて。飲み物、適当に飲んでいいから」
広大さんは、デスクに座り、書類に目を通していた。
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