クールな上司は捜し人〜甘愛を運ぶ幼き想い出
部屋をゆっくり見渡すと、写真が沢山飾ってる。
事務所の人達かなぁ・・・色あせ方で、時代を感じる。
あれ?もしかして、これ、学生時代の広大さん?
この頃もカッコいい・・・
何だか凄く照れて、恥ずかしそうに写ってる。
広大さんの横にいる女性は、明るい笑顔が凄く素敵で、華やか。

下に呼び名みたいなのが書かれている。
『広大君』の横には『桜子さん』
もう1度よく見ると、これって・・・
広大さんと腕を組んでる。
もしかして、照れているのは、このせい?
「碧、碧?」
「は、はいっ!」
「悪いけど、冷蔵庫から飲み物持って来て。碧も何か取っておいで」

気になりながらも、飲み物を取りに行った。
「広大さん、飲み物何も入って無いですけど」
「えっ!はぁ・・・俺買ってくるから、少し待ってて」
広大さんは財布を持って、足早に出て行った。

「広大、何処か行ったの?」
ドアの閉まる音を聞いて、お父さんが部屋から出て来た。
「はい、飲み物が無くて・・・」
「あっ、忘れてた!また怒られるな」
私がクスッっと笑うと、
「碧さん。ありがとう」
お父さんは優しく微笑んでいた。

「私は何も・・・」
「広大が、最近、凄く変わってね。優しい子だったけど、色々あってから殻にこもって、自分を表に出さなくなってね。クールと言われればカッコ良く聞こえるけど、そうじゃない。人を愛する力って、凄いものなんだね」
「いえ、私ばっかりが好きなんです」
「私は父親だからね。見たらよく分かるよ」
お父さんは目尻を下げて、微笑んでいた。
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