クールな上司は捜し人〜甘愛を運ぶ幼き想い出
「笠間さん、ちょっと教えて」
声を掛けて来たのは、言い返すことが出来ない私に、いつも質問して、何か一言愚痴をいう営業部の人。
最近、旅費精算のシステムを変えて、質問の対応も大変だった。

「私で分かることでしょうか?」
「経理課の提案なんだから、分かるだろ?」
「は、はい・・・」
実は、入力する側は、私もマニュアルを見ないと分からないんです、って言いたかった。

「操作方法のマニュアルと、動画がサーバーにアップしている事は、既にご報告済みと思いますが。それを見て操作を覚えて貰えますか」
そこに、時東さんが来て、淡々と営業部の人に言ってくれた。
その人は気まずそうな顔をして、
「あ、あぁ、そうだったなぁ。忘れてたよ」
私への言い方とは全く違う口調で、言い訳をしながら、そそくさと立ち去った。
「人を見て態度を変える奴って、俺、嫌なんだよね」
時東さんは、その人の後ろ姿を冷たい目線で見送り、自分の席に戻って行った。

鼓動よ、静かにしてよ。
近くで見ると、より一層カッコいい。
そして、いつもクールだけど、さりげなく助けてくれる優しさ。
「う~ん、確かにカッコいいよ。でも、私は芸能人で、あの人、カッコいい!っていうのと同じ感じかなぁ。恋愛対象ならどちらかというと、もっと年上が良いなぁ・・・」
そんなこと言うのは、北川さんだけですから・・・
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