クールな上司は捜し人〜甘愛を運ぶ幼き想い出
大学に入って、アルバイトで父さんの仕事を手伝った。
その時、税理士の仕事の面白さと、父さんの仕事に対する姿勢に憧れて、早く資格を取りたくて、税理士試験の勉強にのめり込んだ。

そして、大学3年の時、税理士になりたての3歳年上の桜子さんが入社してきた。
「分からない所、教えてあげるよ」と、気さくに話掛けてくれた。
俺を仲間の1人として接してくれる桜子さんに、段々惹かれていった。

桜子さんの教育係は、同じ年齢で、1年前に入社した税理士の大倉さん。仕事に貪欲で、そして明るい。
直ぐに、桜子さんが大倉さんを見る目が変わっていった。

それから間もなくして、ある日。
夜遅くに忘れ物を取りに来た時、事務所を出た暗がりで、2人がキスしているところを見た。でも、何故か悲しくなかった。あぁ、そうなんだと・・・
やっぱり、今までの彼女と同じなのか。
俺は、桜子さんが好きだと思ってたけど、ただ憧れてただけなんだ。

もしかして、俺が嫉妬するほど、女性を愛することなんて無いのかもな・・・
愛し愛されても、いつか裏切られる・・・
俺の心は、ブレーキを掛けて、閉ざしてしまうんだ。
悲しくて、寂しい思いをしないために。
まぁ、それでもいいか。そう思っていたのに・・・

『カキツバタ』のキーホルダー。
まさか、あの時のあっちゃんが、笠間さん?
辛かった時に、あの公園で、突然現れた俺と遊んでくれた子達、妹みたいに懐いてくれたあっちゃんに、心を救われた。
あの時のキーホルダーを、ずっと大切にしてくれていたんだ。
< 42 / 115 >

この作品をシェア

pagetop