クールな上司は捜し人〜甘愛を運ぶ幼き想い出
「あぁ、もう2度と笠間さんには言って来ないと思うよ。迷惑かけて悪かったね」
「いえ、ありがとうございます」
彼女はホッとした顔で笑顔を見せた。

俺が誤解されたくないから、言っただけなんだけどな。
「もしまた何か言われたら、俺に直ぐ言えよ」
「はいっ!」
満面な笑みで席に戻る笠間さんに、俺の心はかき乱される。
『時東さんは、冷静沈着ですね』
そんな事はない。冷静でいられなくなってきてる。

笠間さんと繋ぐカキツバタのキーホルダーは、俺にとっても、ただのキーホルダーではなくなった。
2人を繋ぐ大切な幼き想い出。
失くしたと必死で捜す笠間さん。彼女の想いに心を打たれる。

もし見つかったら・・・
その時は伝えよう。運命だと受け止めて。
そして、キーホルダーは、再び笠間さんの手に戻って来た。

笠間さんは、俺が捜し人と知った時、どう思うだろう。
がっかりするんだろうか。それならそれでいい。
これ以上、彼女を深く想う前に。
今までと同じ上司と部下のままでいればいい。

2人が出逢った公園に向かい、ようやく伝える事が出来た。
伝えた事で、より一層深まる彼女への愛情。
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