クールな上司は捜し人〜甘愛を運ぶ幼き想い出
私はシャワーを浴びて、キッチンに行くと、広大さんは料理の下ごしらえを始めていた。
「碧、チョコ食べていい?」
「いいですよ。これです」
「ありがとう。俺、手が塞がってるから、箱開けて」
広大さんが手を洗っているうちに、箱を開けた。
うん!やっぱり美味しそう。
「碧、あーんして」
「えっ?私ですか?」
「そう」
私が口を開けると、広大さんは私の口にチョコを入れた。
口に入れた瞬間、ビターのほろ苦く、そして甘さが広がる。
「美味しい?」
「はい!」
「じゃあ、俺もいただくよ。碧、もう1つ、あーんして」

もう1つ、私の口にチョコを入れると、口に含んだチョコを絡み取るようにキスをした。
「丁度いいこの甘さ。美味しいね、このチョコ・・・」
イタズラに頬笑み、自分の唇に付いたチョコを舌で拭き取っていた。

私は、チョコの甘さよりも、広大さんのキスの甘さに頭がボーッとしていた。
「そんな顔してると、夕食の前に、碧を食べるぞ」
「えっと・・・食事の準備、私も手伝いますね」
私が照れて、慌てて料理をし始めると、後ろからそっと抱きしめられた。

「バレンタインなんて、今まで何とも思わなかったけど、嬉しいものなんだな」
「良かったです。喜んで貰えて」
「後で俺が碧を食べるのは別として、今、ここでお礼してもいいんだけど、どうする?」
「えっ?」
「俺はいいよ」
「あの・・・」
もう、私をこんなにドキドキさせて、心臓が持ちませんよ!

顔が熱くなって、返事に困ってると、
「冗談だよ。碧は素直で、可愛すぎだな。お礼は後でゆっくりするから」
優しく頬にキスをされ、広大さんは料理を作り始めた。
もう、広大さんの甘イジワルさに、翻弄させられっぱなしだよ・・・

でも、私だけが知ってる、私だけが味わえる彼女としての特権。
これからも、こんな日が続きますように。
私は切なる願いを、心に唱えた。
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