クールな上司は捜し人〜甘愛を運ぶ幼き想い出
「今までお世話になり、本当にありがとうございました。皆さんのお陰で、ここまで頑張れました。どうか皆さんの力で、部長と新しい課長が来たら、支えてください。宜しくお願いします」
涙を浮かべる人もいて、1人1人広大さんにお礼を言っていた。
最後は私になり、広大さんが近づく。
「笠間さん。今回の決算は完璧だったよ。この調子で頑張って」
「はいっ!ありがとうございました!」

時東課長としての時間は終わりを告げる。
色々思い出し、目が潤んでくる。
そしてすれ違いさま、
「これで堂々と、外で碧と歩けるな」
私の寂しい心を察するように、耳元で囁いた。
もぉーっ!今言わなくても!
赤くなった顔を、皆に分からないように俯いて席に戻った。

広大さんは、事務所の近くにマンションを借りて、少しずつ荷物を運んでいた。
そして、残っている大型の荷物は運送業者に全て任せ、掃除が終わると、何も無くなった部屋を玄関から2人は眺めていた。
「この家には想い出が詰まりすぎてるな」

2人が出逢ってから、過ごした部屋。名残惜しい。
「また新しい家で、想い出を作っていけばいいから」
寂しそうな顔をする私の肩を抱きしめて、玄関の鍵を閉めた。
< 65 / 115 >

この作品をシェア

pagetop