クールな上司は捜し人〜甘愛を運ぶ幼き想い出
新しいマンションに向かうと、お父さんが引っ越し業者の人に、指示をしている。
「広大!この荷物どこに置くんだ?」
もうすっかり元気になったお父さん。安心した。
そして、広大さんが戻って来た事が、とても嬉しそうだった。

「後は俺がするから。父さんは、碧を連れて先に帰ってて。搬入が終わったら、そっちに行くよ」
「そうか。じゃあ、夕食を買い出しに行くね。碧さん、行きましょう」
2人でお寿司やおつまみ、お父さんがお気に入りのお酒を買って、お父さんの家に向かった。

お父さんの家は、1階建ての一軒家だった。
「さぁ、上がって」
居間には大きな机と、横には本棚があって、沢山の本が並んでいた。
「広大さんと同じですね」
「ふとした時に思い出して、調べ物が直ぐ出来るようにね」
やっぱり親子だ。

座った横の柱には、広大さんの成長が記録されるように、線が刻まれていた。
「それね、広大のお母さんがいつも測っていたんだよ。だから、小学6年までの身長しかないんだけどね」
広大さんはここに住んでたんだよね。お母さんとも。
「きっとここに住まないのは、1人で寂しい時間を過ごした家が、嫌なんだろうね」
そんな話をしていると、広大さんが部屋に入って来た。
「んっ?2人共、そんな暗い顔してどうした?」
「いえ、色々お話してただけです。私、準備しますね」
慌てて、買ってきたお寿司や飲み物をテーブルに並べた。
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