クールな上司は捜し人〜甘愛を運ぶ幼き想い出
9月に入ると今度は本決算だ。
1年あっという間だったなぁ。去年は、広大さんに色々教えて貰ってたっけ。

月次で残業していた時、
「笠間さん。ちょっと会議室に来てくれる?」
大倉さんに呼ばれて、会議室に向かった。
「最近、元気がないけど、大丈夫?」
「・・・はい、大丈夫です!」
私は笑顔を作って、返事をした。
「俺に嘘ついても分かるよ。いつも君の笑顔を見ているからね」
「えっ?」
「慰めようと思ったんだ。広大君と上手くいってないでしょ?」
「そういう訳ではないのですが・・・時東さん、忙しいみたいで・・・」
「企業とは違って、処理の数が違う。毎月の決算、月次も待ったなし。法人化も進めてるんだって?そりゃ忙しいよ」
「そうですよね。私のわがままで迷惑かけちゃいけないですから」
「寂しい?」
「それは・・・」
大倉さんに言っても仕方ないし・・・

「じゃあ、俺にすれば?ずっと傍にいるよ」
「大倉さん、そういう冗談は止めないと、女性は本気にしますよ」
「今、結構本気なんだけど」
「か、課長なんですから。部下をからかわないでください」
「じゃあ、真剣ならいい?」

じっと見つめられる瞳に、冗談だと分かっていても、ドキッとする。
「ご心配ありがとうございます。でも大丈夫ですから!お疲れ様でした」
私は席を立ち、頭を下げて部屋を出た。
どうしよう、ドキドキしてしまった。
慰め方、もっと他にあるのに・・・
私って、彼氏がいるのに他の男性にドキドキするなんて・・・
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