クールな上司は捜し人〜甘愛を運ぶ幼き想い出
事務所を後にして、駅まで向かう時、
「先に買い物したいから、寄り道するよ」
広大さんに連れられて向かった先は、ブランドの宝石店。
中に入ると、店員の人が寄って来て、「何かお探しでしょうか?」と声を掛けて来た。

「彼女が選んでから声を掛けます。碧、エンゲージリング、どんなのがいい?」
私が呆然としていると、
「碧?聞いてる?」
「は、はい。ビックリしちゃって」
「碧が好きなのがいいなと思って」
「嬉しいです!」

そうは言っても、値段ばかりに目が行く。
「金額見るなよ。そんなので妥協したら、俺が情けなくなる」
「でも・・・」
「俺、これでもそれなりの報酬あるからね」
「はい・・・」
私は悩みに悩んで、可愛いデザインに小さなダイヤが埋め込まれた指輪を選んだ。
「これでいいの?」
「はいっ!凄く可愛いです」
「じゃあ、これで」

車に戻ると、広大さんは箱から指輪を出し、私の左の薬指にはめた。
「嬉しいよ。俺の碧だって言ってるようで」
「ありがとうございます!」
「あとは明日だな」
広大さんは軽くキスをして、額を付き合わせた。

明くる日の日曜日は、手土産を持ち、お昼前に実家に着いた。
「俺、緊張ってしないんだけど、さすがに今日は緊張するな」
シートベルトを外しながら、緊張した面持ちの広大さん。
私も緊張する・・・
インターホンを鳴らすと、お母さんがドアを開けた。
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