【小説版連載中】エルピスの花嫁〜双子の神様に愛されて〜シナリオ版の更新は終了しました
第四話
○珠子のマンション・リビング(朝) 

布団で眠る珠子。
ごろりと寝返りを打ち目を開けると、目の前に幸夜の顔がある。
驚いて飛び起きる珠子。

珠子(そう、だった‥‥)

珠子の布団の左右には更に布団が敷き詰められ、それぞれ咲仁と幸夜が眠っている。

幸夜は珠子の布団に近いところで、珠子に顔を向ける形で寝ている。
咲仁はうつ伏せで布団を頭まで被って寝ている。

珠子(ほんと、どうしてどうしてこんなことに)

ため息をつく珠子。

○(回想)珠子のマンション・リビング

珠子と双子がダイニングテーブルに向かい合って座っている。

珠子「もしかしてだけど、もしかしてですか?」

幸夜「そのもしかしてでーす。今日から、僕らと同居でーす」

にこにこしている幸夜。

咲仁「喜久さんと連絡ついたんだろ? 同居の件は聞いてなかったのか?」

珠子「聞いてない‥‥」

珠子の返事に、ため息をつく咲仁。

咲仁「とにかく、そういうことだ。受け入れろ」

幸夜「女の子の一人暮らしは危険がいっぱいだからね。僕らがいれば安心安全」

珠子(むしろ危険が増す気がするんですけど!?)

思わず、オオカミルックな双子を想像してしまう珠子。

幸夜「でも正直、兄さんがお邪魔虫〜」

咲仁「お前が暴走しないように、見張り役だ」

頬杖をついて、機嫌が悪そうな咲仁。
具合が悪そうに咳をしている。

珠子「大丈夫? 風邪薬ならあるけど‥‥」

事あるごとに咳をしている咲仁を心配する珠子。

咲仁「薬で治るような物じゃない。癖みたいなものだから気にするな」

咲仁を心配する珠子に、少し面白くなさそうな幸夜。

幸夜「そうだ、珠子ちゃん。
よかったら、これにサインちょうだい」

幸夜がなにかの用紙を取り出す。
テーブルに置かれたそれを珠子が見ると婚姻届。
夫の欄には幸夜の名前が書かれ、証人の欄には珠子の父親の名前がある。

珠子「いいわけ、ないでしょー!」

婚姻届を奪い取り、ビリビリに破く珠子。

珠子「そもそも、まだ結婚できる年じゃないし!」

怒ってリビングを出ていく珠子。

珠子「ホント、信じらんない!」

双子だけが残される。

咲仁「おまえ、焦りすぎだ。もっと落ち着け」

幸夜「仕方がないじゃん、やっと‥‥やっとまた会えたんだから」

珠子の出て行った扉を見つめている幸夜。

幸夜「兄さんにはわかんないよ。僕の気持ちなんか」

○珠子のマンション・珠子の部屋(夜)

珠子(洗面所にカギがあってよかった‥‥)

お風呂上がり、身支度を整えて部屋に戻ってくる珠子。
珠子が扉を開けると、珠子のベッドに咲仁がいる。
イヤフォンをつけて、スマホを見ている。

珠子「なにしてんの!?」

咲仁「うるさい、静かにしろ」

珠子の方を見ようともしない咲仁。

珠子「私のベッドなんだけど!」

咲仁「知ってる」

珠子「だったら、なんで!」

咲仁「注文したベッドが明日まで届かない」

珠子「だからって‥‥」

傍若無人な咲仁に、言葉が出ない珠子。

珠子「私が寝れないじゃない!」

咲仁「どうぞ」

壁際に寄り、ベッドを半分空ける咲仁。

珠子「そういうことじゃ‥‥!」

幸夜「珠子ちゃーん! 一緒に寝よう!」

枕を持って部屋に飛び込んでくる幸夜。
部屋に咲仁がいるのに驚く。

幸夜「兄さん、なにしてんの!
珠子ちゃんは僕の婚約者なんだからね!」

珠子と咲仁の間に入る幸夜。

咲仁「来ると思った」

言い合う二人にため息をつく珠子。

珠子(部屋にカギつけよう‥‥)

(回想終了)

○珠子のマンション・リビング(朝)

珠子(私のベッドで川の字よりはマシだけどさ‥‥)

眠い目をこすりながら、珠子が起き上がる。

○珠子のマンション・洗面所(朝)

珠子が歯を磨いてると、咲仁が入ってくる。
寝起きなので咲仁はマスクをしていない。

咲仁「おはよう」

珠子「おはよう‥‥」

口をゆすいで挨拶を返す珠子。
咲仁が歯ブラシに歯磨き粉をつけているのをじっと見ている。

咲仁「なに?」

珠子の視線に気がつき、咲仁が見返す。

咲仁「俺に見惚れてんの?」

唇が耳にふれそうなほど珠子の近くでささやく咲仁。

珠子「違う!」

顔を赤くして、咲仁の胸を押し距離を取る珠子。

珠子「もっと礼儀正しい人かと思ったのに、なんか最初と印象違う‥‥」

咲仁「そりゃあな。
幸夜がいきなりキスしやがるし、俺まで態度悪かったら最悪警察沙汰だろ」

珠子「まあ、確かに」

幸夜にキスされた頬を思わずさわる珠子。

珠子「って、そうじゃなくて‥‥え、と‥‥」

咲仁から目を逸らし、言い淀む珠子。

珠子「昨日は、助けてくれてありがとう」

咲仁の顔は見れないまま、抱きしめられたことを思い出し頬を染めて赤くなりながらお礼を言う珠子。

一瞬きょとんとした顔をするが、昨日のことだと合点がいくと得意げに笑う咲仁。

咲仁「どういたしまして」

珠子「でも、私のことどんくさいって言ったでしょ!
ちゃんと聞いてたんだからね」

咲仁「はいはい」

珠子が抗議するが、咲仁は取り合わず歯を磨きだす。

○珠子のマンション・廊下

脱衣所ので戯れ合う珠子と咲仁を、起きてきた幸夜が廊下から見ている。
幸夜は、半ば睨むような険のある表情。

珠子「あ、おはよう。幸夜くん」

咲仁「はよ」

幸夜「おっはよ〜」

珠子が幸夜の存在に気づきそうになると、その表情を引っ込めていつもの笑顔を浮かべ、挨拶をしながら洗面所に入っていく。

幸夜(兄さんには、絶対に渡さないんだからね)

目は笑ってない幸夜。
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