【小説版連載中】エルピスの花嫁〜双子の神様に愛されて〜シナリオ版の更新は終了しました
第七話
○学校廊下
(前回回想)
咲仁「珠子はキマイラに襲われる」
周囲を気にしながら耳打ちする咲仁と青ざめる幸夜。
咲仁「このままだと、珠子は死ぬぞ」
(回想終了)
○ 土手沿いの道(夕方・小雨)
傘をさし、息を切らしながら走る珠子。
その後ろを追いかけてくるキマイラ。
珠子「きゃあっ!」
キマイラの魔の手が伸び、鋭く大きな爪が珠子の傘を裂く。
衝撃で膝を折り、前のめりに転倒して頬や膝などあちこちを擦る珠子。
珠子は傘を手放し、爪に引っかかった傘をキマイラが手を振って払いのけているうちに立ち上がる。
痛む足を堪えながら雨の中立ち上がり走ろうとするが、すぐさまキマイラの追撃が珠子の背中に迫る。
キマイラを振り返りながら悲鳴を上げる間もなく、キマイラの前足が珠子を押し倒し仰向けに倒れる珠子。
珠子「うぅ‥‥」
胸を押されて声も出せない珠子。
幸いにもキマイラの前足との間にカバンが入ったため、爪はカバンに食い込むのみで珠子は無傷。
しかし、後頭部を強く打ち付け意識が朦朧としている。
ゆっくりとキマイラのライオンの口が開けられ、鋭いキバの間からヨダレがだらだらと垂れているのが見える。
迫るキバに痛みを覚悟して目を閉じる珠子。
しかし次の瞬間、双子の声がする。
幸夜「珠子ちゃん!」
咲仁「まだ生きてるか?」
ウォーターカッターのような水流が珠子を押さえつけるキマイラの腕を貫き、キマイラが珠子の上から飛び退く。
双子が珠子とキマイラの間に立ち塞がる。
振り返り珠子の無事を確認する双子。
珠子の目には、二人がヒーローに見えた。
安心して涙ぐむ珠子の肩を花が抱く。
花「遅くなってごめんね」
珠子が振り返ると、巨大な狼を従えた花がいる。
幸夜「珠子ちゃん、もう安心してね」
咲仁「一人でよく頑張ったな」
珠子を振り返る双子の言葉に、珠子の涙があふれる。
咲仁「幸夜! 右の鉤爪、死角からヘビだ」
咲仁の声に幸夜がキマイラと向き直る。
咲仁の言葉通り右の鉤爪でキマイラが攻撃してくるが幸夜はなんなくかわし、更にキマイラの巨体の影から攻撃をしかけるヘビの尾の牙も避ける。
幸夜「今日が雨降りでよかった」
幸夜を中心に雨粒が渦を巻き、礫のようにキマイラを襲う。
咲仁「180秒後にアエトスが上空から奇襲だ。警戒しろ」
目の前で巻き起こるファンタジーな光景に頭がついていかずぼうっとしている珠子。
花「珠ちゃん」
榴「背中に乗れ、離れるぞ」
珠子(榴先輩の声‥‥?)
狼は榴の声で喋っていた。
花に促され、狼になった榴の背中に乗る珠子。
榴「行くぞ」
花も乗るとその場を走り去る。
幸夜「よくも僕のお嫁さんに酷いことしてくれたね」
咲仁「覚悟は出来てるんだろうな」
珠子たちが無事に離脱したことを確認した双子は、改めてキマイラと向き合った。
○小さな公園(雨・夕暮れ)
ブランコと滑り台しかない小さな公園で、珠子と花を下ろした狼は榴の姿に戻る。
珠子(本当に榴先輩だった‥‥)
花とベンチに座った珠子は、呆然としている。
花「痛い?」
花がハンカチで珠子の傷を押さえる。
花「恐かったね」
ハンカチを押さえる花の手が、淡く光る。
血をぬぐうように花がハンカチをどかすと、傷が消えていた。
花「もう痛くない?」
珠子「う、うん‥‥」
他の怪我も同じように治していく花。
榴「遅くなってすまない。花と同じ匂いをつけてるから、雨でなければすぐ追えたんだが‥‥」
申し訳なさそうな榴に、珠子は首を振る。
珠子(そんなことより)
珠子「なんだったの、あれ‥‥」
花「あればキマイラっていうんだけど‥‥そういうことじゃないわよね」
珠子は震えている。
珠子「花も変。いつもの花じゃないみたい。榴先輩も、幸夜くんたちだって、みんな変だよ」
困ったように笑う花。
花「本当は何も知らないまま幸夜くんと幸せになってくれるのが一番だったけど‥‥やっぱり、そうはいかなかったわね」
榴「俺たちのことは、幸夜と咲仁が合流してから話そう」
花「珠ちゃんのお家にお邪魔していい? あそこは安全だから」
○珠子のマンション(お風呂場)
珠子がシャワーを浴びている。
珠子(綺麗に治ってる‥‥)
珠子が怪我をしたはずの場所を見ても、痕ひとつない。
花「どう? ちょっと落ち着いた?」
お風呂場の外から花が声をかける。
珠子「ありがとう‥‥花も濡れたでしょ。入る?」
花「タオルで大丈夫。ありがとう」
花が立ち去る気配がして、蛇口をひねり再びシャワーを浴びる珠子。
一通り身綺麗にして、お風呂から出る珠子。
お風呂の扉を開けると脱衣所には濡れた服を脱いで上半身裸の咲仁がいた。
咲仁の右脇には、範囲の広い大きな傷跡がある。
珠子「きゃああああああああ!」
半裸の咲仁と全裸の珠子。
珠子は咲仁と目が合い、悲鳴を上げてお風呂場に逆戻りする。
珠子(見られた!?)
真っ赤になって、お風呂場の中にうずくまる。
幸夜「珠子ちゃん、大丈夫!?」
珠子の悲鳴に、幸夜がかけつけてきた。
珠子「大丈夫、大丈夫! 足が滑っただけ」
ハダカを見られたとは言えず、ごまかす珠子。
咲仁「俺の着を替え覗くなよ」
幸夜「なにを今更。
珠子ちゃん。なんかあったら、すぐ呼んでね」
珠子「ありがとう」
幸夜が立ち去る。
咲仁「‥‥俺はちゃんと声かけたからな」
珠子「シャワー中に聞こえるわけないじゃん!」
咲仁「安心しろ。オマエのつるぺたな体になんか興味ないから」
珠子「そういう問題じゃない!」
珠子(やっぱり見られてる‥‥!!)
脱衣所から咲仁が着替えている気配がする。
さっき見た傷跡を思い出す珠子。
珠子「怪我とか、してない‥‥?」
咲仁「そんなヘマはしない」
珠子「‥‥助けてくれてありがとう」
お風呂場の扉を開けて、顔だけ見せてお礼を言う珠子。
咲仁「お礼にまた見せてくれんの?」
ニヤリと笑う咲仁。
珠子「見せない!」
またお風呂場に引っ込む珠子。
咲仁「俺の能力は戦い向きじゃない。
実際に戦ったのはほとんど幸夜だ。
礼を言うなら幸夜に言ってやれ」
珠子「うん‥‥でも、ありがとう」
○珠子のマンション・リビング(夜)
珠子「幸夜くん、助けてくれてありがとう」
幸夜「当然のことだよ」
珠子がリビングに行くと、四人が立って珠子を待っていた。
珠子「それで‥‥あれは何なの? みんなは‥‥何?」
珠子の目が不安で揺らぐ。
その不安を和らげるように幸夜が微笑む。
幸夜「こんなこと急に言っても信じられないかもしれないけど、僕らはギリシア神話の神々の化身なんだ」
落ち着いた表情で話す幸夜。
幸夜「僕はエピメテウス」
咲仁「‥‥プロメテウス」
花「私はペルセポネ」
榴「ハデス」
各々自己紹介するが、珠子はピンときてない様子。
幸夜「そして、珠子ちゃん。
君は全てを与えられた人類最初の女性、パンドラの生まれ変わりなんだよ」
幸夜が珠子の手を取り告げる。
珠子「パンドラ‥‥?」
幸夜「珠子ちゃんも、パンドラの箱は聞いたことあるでしょ?」
幸夜の言葉に頷く珠子。
珠子「災厄は解き放たれてしまったけれど、希望はまだ君の中に残ってる」
珠子の手の甲に口付けをして、幸夜が恭しく告げる。
幸夜「君はーー希望の花嫁なんだ」
(前回回想)
咲仁「珠子はキマイラに襲われる」
周囲を気にしながら耳打ちする咲仁と青ざめる幸夜。
咲仁「このままだと、珠子は死ぬぞ」
(回想終了)
○ 土手沿いの道(夕方・小雨)
傘をさし、息を切らしながら走る珠子。
その後ろを追いかけてくるキマイラ。
珠子「きゃあっ!」
キマイラの魔の手が伸び、鋭く大きな爪が珠子の傘を裂く。
衝撃で膝を折り、前のめりに転倒して頬や膝などあちこちを擦る珠子。
珠子は傘を手放し、爪に引っかかった傘をキマイラが手を振って払いのけているうちに立ち上がる。
痛む足を堪えながら雨の中立ち上がり走ろうとするが、すぐさまキマイラの追撃が珠子の背中に迫る。
キマイラを振り返りながら悲鳴を上げる間もなく、キマイラの前足が珠子を押し倒し仰向けに倒れる珠子。
珠子「うぅ‥‥」
胸を押されて声も出せない珠子。
幸いにもキマイラの前足との間にカバンが入ったため、爪はカバンに食い込むのみで珠子は無傷。
しかし、後頭部を強く打ち付け意識が朦朧としている。
ゆっくりとキマイラのライオンの口が開けられ、鋭いキバの間からヨダレがだらだらと垂れているのが見える。
迫るキバに痛みを覚悟して目を閉じる珠子。
しかし次の瞬間、双子の声がする。
幸夜「珠子ちゃん!」
咲仁「まだ生きてるか?」
ウォーターカッターのような水流が珠子を押さえつけるキマイラの腕を貫き、キマイラが珠子の上から飛び退く。
双子が珠子とキマイラの間に立ち塞がる。
振り返り珠子の無事を確認する双子。
珠子の目には、二人がヒーローに見えた。
安心して涙ぐむ珠子の肩を花が抱く。
花「遅くなってごめんね」
珠子が振り返ると、巨大な狼を従えた花がいる。
幸夜「珠子ちゃん、もう安心してね」
咲仁「一人でよく頑張ったな」
珠子を振り返る双子の言葉に、珠子の涙があふれる。
咲仁「幸夜! 右の鉤爪、死角からヘビだ」
咲仁の声に幸夜がキマイラと向き直る。
咲仁の言葉通り右の鉤爪でキマイラが攻撃してくるが幸夜はなんなくかわし、更にキマイラの巨体の影から攻撃をしかけるヘビの尾の牙も避ける。
幸夜「今日が雨降りでよかった」
幸夜を中心に雨粒が渦を巻き、礫のようにキマイラを襲う。
咲仁「180秒後にアエトスが上空から奇襲だ。警戒しろ」
目の前で巻き起こるファンタジーな光景に頭がついていかずぼうっとしている珠子。
花「珠ちゃん」
榴「背中に乗れ、離れるぞ」
珠子(榴先輩の声‥‥?)
狼は榴の声で喋っていた。
花に促され、狼になった榴の背中に乗る珠子。
榴「行くぞ」
花も乗るとその場を走り去る。
幸夜「よくも僕のお嫁さんに酷いことしてくれたね」
咲仁「覚悟は出来てるんだろうな」
珠子たちが無事に離脱したことを確認した双子は、改めてキマイラと向き合った。
○小さな公園(雨・夕暮れ)
ブランコと滑り台しかない小さな公園で、珠子と花を下ろした狼は榴の姿に戻る。
珠子(本当に榴先輩だった‥‥)
花とベンチに座った珠子は、呆然としている。
花「痛い?」
花がハンカチで珠子の傷を押さえる。
花「恐かったね」
ハンカチを押さえる花の手が、淡く光る。
血をぬぐうように花がハンカチをどかすと、傷が消えていた。
花「もう痛くない?」
珠子「う、うん‥‥」
他の怪我も同じように治していく花。
榴「遅くなってすまない。花と同じ匂いをつけてるから、雨でなければすぐ追えたんだが‥‥」
申し訳なさそうな榴に、珠子は首を振る。
珠子(そんなことより)
珠子「なんだったの、あれ‥‥」
花「あればキマイラっていうんだけど‥‥そういうことじゃないわよね」
珠子は震えている。
珠子「花も変。いつもの花じゃないみたい。榴先輩も、幸夜くんたちだって、みんな変だよ」
困ったように笑う花。
花「本当は何も知らないまま幸夜くんと幸せになってくれるのが一番だったけど‥‥やっぱり、そうはいかなかったわね」
榴「俺たちのことは、幸夜と咲仁が合流してから話そう」
花「珠ちゃんのお家にお邪魔していい? あそこは安全だから」
○珠子のマンション(お風呂場)
珠子がシャワーを浴びている。
珠子(綺麗に治ってる‥‥)
珠子が怪我をしたはずの場所を見ても、痕ひとつない。
花「どう? ちょっと落ち着いた?」
お風呂場の外から花が声をかける。
珠子「ありがとう‥‥花も濡れたでしょ。入る?」
花「タオルで大丈夫。ありがとう」
花が立ち去る気配がして、蛇口をひねり再びシャワーを浴びる珠子。
一通り身綺麗にして、お風呂から出る珠子。
お風呂の扉を開けると脱衣所には濡れた服を脱いで上半身裸の咲仁がいた。
咲仁の右脇には、範囲の広い大きな傷跡がある。
珠子「きゃああああああああ!」
半裸の咲仁と全裸の珠子。
珠子は咲仁と目が合い、悲鳴を上げてお風呂場に逆戻りする。
珠子(見られた!?)
真っ赤になって、お風呂場の中にうずくまる。
幸夜「珠子ちゃん、大丈夫!?」
珠子の悲鳴に、幸夜がかけつけてきた。
珠子「大丈夫、大丈夫! 足が滑っただけ」
ハダカを見られたとは言えず、ごまかす珠子。
咲仁「俺の着を替え覗くなよ」
幸夜「なにを今更。
珠子ちゃん。なんかあったら、すぐ呼んでね」
珠子「ありがとう」
幸夜が立ち去る。
咲仁「‥‥俺はちゃんと声かけたからな」
珠子「シャワー中に聞こえるわけないじゃん!」
咲仁「安心しろ。オマエのつるぺたな体になんか興味ないから」
珠子「そういう問題じゃない!」
珠子(やっぱり見られてる‥‥!!)
脱衣所から咲仁が着替えている気配がする。
さっき見た傷跡を思い出す珠子。
珠子「怪我とか、してない‥‥?」
咲仁「そんなヘマはしない」
珠子「‥‥助けてくれてありがとう」
お風呂場の扉を開けて、顔だけ見せてお礼を言う珠子。
咲仁「お礼にまた見せてくれんの?」
ニヤリと笑う咲仁。
珠子「見せない!」
またお風呂場に引っ込む珠子。
咲仁「俺の能力は戦い向きじゃない。
実際に戦ったのはほとんど幸夜だ。
礼を言うなら幸夜に言ってやれ」
珠子「うん‥‥でも、ありがとう」
○珠子のマンション・リビング(夜)
珠子「幸夜くん、助けてくれてありがとう」
幸夜「当然のことだよ」
珠子がリビングに行くと、四人が立って珠子を待っていた。
珠子「それで‥‥あれは何なの? みんなは‥‥何?」
珠子の目が不安で揺らぐ。
その不安を和らげるように幸夜が微笑む。
幸夜「こんなこと急に言っても信じられないかもしれないけど、僕らはギリシア神話の神々の化身なんだ」
落ち着いた表情で話す幸夜。
幸夜「僕はエピメテウス」
咲仁「‥‥プロメテウス」
花「私はペルセポネ」
榴「ハデス」
各々自己紹介するが、珠子はピンときてない様子。
幸夜「そして、珠子ちゃん。
君は全てを与えられた人類最初の女性、パンドラの生まれ変わりなんだよ」
幸夜が珠子の手を取り告げる。
珠子「パンドラ‥‥?」
幸夜「珠子ちゃんも、パンドラの箱は聞いたことあるでしょ?」
幸夜の言葉に頷く珠子。
珠子「災厄は解き放たれてしまったけれど、希望はまだ君の中に残ってる」
珠子の手の甲に口付けをして、幸夜が恭しく告げる。
幸夜「君はーー希望の花嫁なんだ」