秘密の夏。それを恋と呼ぶなら。
「見たかったんでしょう。光輝くん。だから、そこで見ていて」

 何も言えない。言葉が出てこない。彼女から目が離せない。彼女が僕を見ていた。僕の目を見ている。少し茶色がかった大きな瞳が僕を呪縛する。彼女の手が動いている。もぞもぞと、めくられた白いスカートの中で妖しくうごめている。スカートがさらにめくられ、太ももの内側まで差し込まれた手がちらっと見えた。白い手が、滑らかな白い太ももの、その奥のほうで動いている。僕を見つめたままで、何も言わずに。
 
 彼女の左手は胸のあたりにあった。ゆっくり、その手が動く。胸のふくらみを白い服の上から、手のひらで撫でる。掴むようにしたり、さすってみたり、ずうっと僕の目を見つめたまま。

 窓からやってきた風が彼女の髪をもて遊ぶ。蝉の声。すると

「ああ…」

 あの日と同じため息が、僕を見つめている彼女の唇からこぼれた。

「ああぁ。う」
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