シークレット・ブルー 〜結ばれてはいけない私たち〜

 ――どんなに愛し合っても、私たちは決して結ばれない。

◆◇◆

「どーしたの、碧。元気ないじゃん」

 ある秋の日の昼休み。学食の窓際の丸テーブル。
 食べかけのミートソースパスタそっちのけで頬杖をつき、嘆息する私――長谷屋碧(はせや あおい)に、手遊びを中断した山添杏香(やまぞえ きょうか)が訊ねる。

「うん……」

 向かいに座る彼女は、すでにタコライスを食べ終えており、手持無沙汰だったのかアイスティーのストローの包装紙でリボンのようなものを作っていたらしい。
 私がうなずくと、杏香はそのリボンもどきをぽいっと放り出してこう訊ねた。

「わかった。蒼のことでしょ?」
「どうしてわかるの?」

 思わず聞き返す私に、彼女はぷっと噴き出しながら「あのねぇ」と続ける。

「何年あんたの友達やってると思ってんの」

 確かに、と思って指を折り、数えてみる。
 ……杏香とは中学二年からの付き合いだから、もう八年になるのか。
 当時不登校気味で、いかにも訳ありっぽい雰囲気が漂っていた私は、たまに登校したときには担任やクラスメイトから腫れものに触るような扱いを受けていた。
 けれど杏香だけは違った。楽観的でよくも悪くも気にしない性格の彼女は、「なんで学校来ないの?」とか「来ないと三年になれないじゃん。ヤバくない?」とか、ガンガン話しかけてきた。
 それが新鮮で、私は杏香とよく話したり、遊んだりするようになった。高校、大学と進路が重なったこともあり、今ではかけがえのない親友だ。
 ……『親友』だなんて、恥ずかしくて面と向かっては言ったことがないけど。
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