シークレット・ブルー 〜結ばれてはいけない私たち〜

 次の日――土曜日。蒼から「大事な話をしたい」との誘いがあった。
 
 私たちのデートは、もっぱら自宅だ。
 母親が彼氏の家に泊まりに行く土日がメイン。
 その母親が自宅にいるときは、最寄り駅から離れたカフェも利用したりするけれど、誰も他人のことなど見ていないとは思いつつ、なんとなく周囲の存在や視線が気になってしまうから、回数としてはかなり少ない。

「意外と久しぶりだね。蒼とゆっくり話すの」
「そうだね」

 リビングのローテーブルに座り、温かい紅茶の入ったマグを傾ける。
 ひと口飲んだあと、ふと思い出して小さく笑った。

「お母さん、彼氏とケンカしてここのところ週末家にいることが多かったんだよね」
「昨日仲直りの電話してたよ。年ごろの子どもがいるってのに熱烈な会話だったな」

 私が言うと、蒼はやれやれといった風に苦笑する。
 ――そうなんだ。それは知らなかった。
 母親は感情の起伏が激しいタイプで、行きつけの飲み屋で知り合う男性と別れては付き合ってを繰り返している。
 ここ数ヶ月付き合っている彼氏は母と同じ直情型のようで、電話でしょっちゅう揉めているのがいやでも聞こえてくる。
 今日はやたらと楽しそうに出かけたと思ったら、昨日仲直りしたらしい。

「ま、これでしばらく機嫌がいいだろうし、助かるかな」
「うん。それはあるね」

 男性と上手くいっているときの母親は、精神的に安定している。
 変に当たられるのも困るし、このままの状態をキープしてもらいたいところだ。
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