シークレット・ブルー 〜結ばれてはいけない私たち〜
「准くんと一緒にいるの楽しかったし、お付き合いしたらもっと楽しいなって思ったからだよ」
「その割には、迷ってるみたいじゃなかった?」
「それは――」
 
 准くんと初めてのデートをしてから、返事を一ヶ月ほど保留していた。
 あまりにも待たせてしまったので、准くんは私にフラれたものと思っていたようだ。
 蒼がいなくなったあとの私は、しばらくの間放心状態だった。
 長年、ひっそりと私の心を支え続けてくれた彼が急にいなくなってしまったのだから、無理もない。
 もうなにもかもどうでもいいと放り出したくなったところを思い留まったのは、蒼が遺してくれた言葉。

『僕たちは、ちょっとふたりきりの時間が長すぎたのかもしれない。碧は外に目を向けて、自分を本当の意味で愛してくれる人を探したほうがいい』

 蒼が、私自身が作り上げた心の拠り所だったのなら、私はまだ本当の意味での愛情を知らないことになる。

『カミジュンっていい人そうな感じするし、碧のこと……大事にしてくれそうな気がするし』

 ――そんな風にも、蒼は言っていた。
 私も准くんに対して楽しさや居心地のよさを感じていたし、ならばその彼の好意に飛び込んでいこうと決めたのだ。

「……その、告白されたから、とかじゃなくて……どうしたいのか自分の気持ちをきちんと確かめてから返事をしたかったんだ」

 准くんとお付き合いをしたい。そう明確に自分のなかで答えを出してからじゃないと、告白をしてくれた准くんにも、私の幸せのために身を引いてくれた蒼にも、申し訳がないと考えた。
 気持ちの整理がついたタイミングで、私は准くんに「お願いします」と返事をした。
 准くんは、私が想像していたよりもずっとよろこんでくれた。

「そっか。……ちゃんと考えてくれてありがとう。碧ちゃんのそういうところ、すごく好きだな」
「ううん。私こそありがとう」
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