シークレット・ブルー 〜結ばれてはいけない私たち〜
「違ってたらごめん。なんとなくだけど、碧さぁ、最近カミジュンともイイ感じだったりする?」
「…………」
 
 不意に、同じゼミのカミジュンくん――こと、神川准(かみかわ じゅん)くんの名前が出てきたので、私はドキッとした。
 会話に空白が生じる。

「やっぱそうなの?」

 その不自然な間を肯定の意と受け取った杏香が、畳みかけて訊ねた。
 私は控えめにうなずくと、それまでどこか沈んでいた杏香の表情がぱっと明るくなる。

「いいじゃん。カミジュンいいヤツだよ。明るいし、面白いし、周りに気ぃ遣うしさ。あたし、彼は碧のこと気に入ってると思う」
「……そうかも。前に一回デート誘われた」
「えっマジ。行ったの?」
「最初は断ったんだけど、『一回でいいから』って押し切られて……」

 ほかの同期の子と一緒のときは、ムードメーカー的な存在で、率先して発言したり、周りを笑わせたりしているイメージだったから、まさか私みたいな、冴えない地味なタイプに興味を持ってくれるなんて思わなかった。
 でもサービス精神旺盛な彼にはもともと好感を持っていたし、一回遊びに行くだけでいいなら――という軽い気持ちでOKしたのだ。
 ……そしたら、すごく、すごーく、楽しかった。
 ごくごく一般的な、テーマパークでのデートだったけれど、私にとっては初めてで、すべてが刺激的で、ワクワクに満ちていた。
 彼がいろいろ話を振ってくれたおかげで待ち時間も苦じゃなかったし、話すテンポも内容も、私に合せてくれたからか気疲れすることもなかった。
 それどころか、一緒にアトラクションではしゃいで、盛り上がって……閉園時間が近づくころには、このまま帰るのが惜しくなっていた。

『俺、今日一緒にいて確信したよ。やっぱり長谷屋さんが好きだ。付き合ってほしい』

 後ろ髪引かれつつ駅の構内で別れるとき、彼は私にはっきりと言った。 
< 3 / 22 >

この作品をシェア

pagetop