シークレット・ブルー 〜結ばれてはいけない私たち〜
「……で、相談って?」
 
 僕は自分の分のペットボトルのキャップを開けながら、いちど深呼吸をして口を開く。

「杏香はカミジュンって知ってる? 神川准。同じゼミの」
「知ってるよ」
「……デートに行ったみたいなんだ。その、カミジュンと」

 ボトルの中身を一口嚥下する。直後の僕の言葉に、にこにこしていた杏香の表情がすこし強張ったのがわかった。

「……情報早いね。碧から聞いたの?」
「うん。て言っても直接じゃないけど。碧って、スマホで日記つけてるんだ。それに書いてあった」

 楽しかったことやささいな愚痴などは、そばにいる僕に打ち明けてくれることが多かったけれど、大学に入ってからは、僕にも知られたくないことはひっそりと日記をつけているのを知った。

「え、勝手に読んでいいわけ?」
「いけないから、読んでるのは内緒にしてる」
「悪いヤツ~」
 
 杏香の口調は冗談っぽかったけれど、僕は胸が少し苦しくなった。
 いくら碧が相手でも、勝手に日記を見てしまうというのはやりすぎだ。自覚している。
 悪い気持ちもありつつ、心配だからとつい読んでしまう自分が嫌いだった。

「……僕も見たことあるんだけど、いい人そうだよね、カミジュン」
「そうだね。あたしは好きだよ。いつもみんなの中心にいて、周りを気遣えるイイ男。それにイケメンだからけっこうモテるんだけど、今は碧のこと気に入ってるみたいだね」
「そうなんだ」
 
 僕も杏香と同じ印象を持っていた。輪の中心でほかのみんなを楽しませている雰囲気。
 それでいて、気遣いも欠かさない。そういうデキる男子を、女子は放っておかないだろう。

「碧もカミジュンのこと、好きになりかけてるみたいなんだ」
「……そう、みたいだね」

 決まり悪そうな反応を見るに、杏香はそれを知っていたのだろう。
 碧のことだし、きっと彼女には相談していると思っていたから、予想通りだ。
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