シークレット・ブルー 〜結ばれてはいけない私たち〜
僕は困ったように視線を逸らす彼女に「杏香」と呼びかける。
「――僕、碧のことが好きだよ。その気持ちはずっと変わってない。でもね、好きな気持ちと同じくらい、碧の幸せを望んでるんだ」
小さいころの碧は泣き虫で、自分に自信がなかったせいか、学校でなにか困ったことがあるたびに不安を吐露していた。
それに対して「大丈夫だよ」「泣かないで」と慰めるのが僕の役目。ひとつ年上なのに、まるで妹みたいだった。
実の親から理不尽な扱いを受けていた僕たちは、いつしか互いの存在が心の支えになっていた。
優しく素直で、全身全霊で僕を頼ってくれる純粋な碧を、心からかわいい、愛おしいと感じ、この手でずっと守ってあげたいと思うようになった。
告白は碧から。まさか碧も同じ気持ちだとは思わなくて、おどろいたのをよく覚えている。
でも考えるより先に「僕も好きだよ」と答えていた。「これからもずっと、碧を守るよ」とも。
「ずっと碧と一緒にいられたら、僕はうれしい。でも、それじゃ碧は、本当の意味で幸せにはなれないよね」
彼女とともに歳を重ねるにつれ、わかったことがある。
それは、好きな気持ちだけでは一緒にいられない、ということ。
僕たちは普通の恋人同士じゃない。手を繋いで外を歩くこともできないし、キスやその先なんてもってのほか。
いつだったか、碧が「いつかウェディングドレスを着たい」と言ったことがあった。
それは多分、僕のとなりで、という意味を含んでいたのだと思うけれど、僕はその言葉を聞いて、うれしいと感じるよりも不安に襲われた。
仮に僕たちが結婚すると公言したら、周囲は揃って「正気か」とか「あり得ない」と罵り、顔を顰めるだろう。
僕たちに関心の薄い母親ですら、嫌悪を露にするかもしれない。碧もひどく傷つくに決まっている。
これは僕たちがどんな努力をしても変わらない、無慈悲な現実なのだ。
「――僕、碧のことが好きだよ。その気持ちはずっと変わってない。でもね、好きな気持ちと同じくらい、碧の幸せを望んでるんだ」
小さいころの碧は泣き虫で、自分に自信がなかったせいか、学校でなにか困ったことがあるたびに不安を吐露していた。
それに対して「大丈夫だよ」「泣かないで」と慰めるのが僕の役目。ひとつ年上なのに、まるで妹みたいだった。
実の親から理不尽な扱いを受けていた僕たちは、いつしか互いの存在が心の支えになっていた。
優しく素直で、全身全霊で僕を頼ってくれる純粋な碧を、心からかわいい、愛おしいと感じ、この手でずっと守ってあげたいと思うようになった。
告白は碧から。まさか碧も同じ気持ちだとは思わなくて、おどろいたのをよく覚えている。
でも考えるより先に「僕も好きだよ」と答えていた。「これからもずっと、碧を守るよ」とも。
「ずっと碧と一緒にいられたら、僕はうれしい。でも、それじゃ碧は、本当の意味で幸せにはなれないよね」
彼女とともに歳を重ねるにつれ、わかったことがある。
それは、好きな気持ちだけでは一緒にいられない、ということ。
僕たちは普通の恋人同士じゃない。手を繋いで外を歩くこともできないし、キスやその先なんてもってのほか。
いつだったか、碧が「いつかウェディングドレスを着たい」と言ったことがあった。
それは多分、僕のとなりで、という意味を含んでいたのだと思うけれど、僕はその言葉を聞いて、うれしいと感じるよりも不安に襲われた。
仮に僕たちが結婚すると公言したら、周囲は揃って「正気か」とか「あり得ない」と罵り、顔を顰めるだろう。
僕たちに関心の薄い母親ですら、嫌悪を露にするかもしれない。碧もひどく傷つくに決まっている。
これは僕たちがどんな努力をしても変わらない、無慈悲な現実なのだ。