「好き」と言わない選択肢
「撮影のせいじゃないと、医者も言ってたじゃないか。咲音の願いを叶えてやろうと決めただろう」

「だけど、次に発作が起きたら…… 覚悟してくれって…… そんな…… 嫌よ…… 
 だって、ここ数年、発作も起きてなかったのよ。もって五年の心臓だって言われて、七年よ。もしかしたら、このまま大丈夫じゃないかって、あなたも言ってたじゃない…… それなのに…… こんな……」

 取り乱す彼女の母の横で、ただ、じっと肩を震わせている社長の後ろ姿があった。

 何を言っているんだ、この人達は……

 お俺は、震えだす体を支える事が出来ず、その場に崩れ落ちた。

 わかんねぇよ。何にもわかんねぇよ……

 両手で頭を抱えた。頭の中が、全てを拒否しようとしている。
 悪い夢なら、早く覚めてくれ!

「おい! 何を聞いた!」

 ガシッと肩を掴まれ顔を上げた。
< 28 / 49 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop