「好き」と言わない選択肢
「まったく…… よく分かんねぇけど、泣きたいだけ泣け!」

 廊下に座り込んだ俺の横に、岡田も座り込んだ。

「帰れよ……」

「暇だから、お前の姿眺めてるよ…… 何にも聞かねえよ……」


 岡田が、俺の前にペットボトルの水を差し出した。
 彼女、水飲みたがっていたのに、俺、何やってんだ……


「なあ、今、言う事じゃねぇかもしれないけど、言った方がいい気がする。お前さ、ずっと橋本の事好きだっただろ?」

「そんな……」

「そんなのお見通しよ。お前って人を寄せ付けないようなクールなとこあって、仕事は出来ても以外に不器用じゃん。お前が大阪行く前、橋本を賭けにした事あっただろ?」

「まさか、お前、わざと?」


「ああ…… ああいえば、お前が行動に移すかと思ってさ。それに、あの時の俺らの周りの奴ら、どうしようもなかっただろ? 結局、俺とお前だけだしか残ってないじゃん……」

「おい、そのせいで、俺がどんな目にあったか!」

 岡田を襟ぐりを掴んだ……

「あの時さ、誤解されたと落ち込んで、仕事で証明してからだとか言って、大阪行っちまっただろ。それはそれで凄いと思うけどさ、また、同じ事繰り返すなよ? また、壁が出来てんだと思うけど、結果じゃなくて、自分の気持ちと相手の気持ち、ぶつける事も大事なんじゃないの? また、二年経っちまうぞ」

「二年……」

 そんな時間は無いかもれない……


 確かに、あの時誤解されたのは岡田の企みのせいだ。でも、それが無ければ、彼女をもんたに探しには行かなかっただろう? 

 あの時、ちゃんと話さなかった俺のせいだ…… 
 尊い時間を失ってしまった悔いが胸を締め付けた……
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