「好き」と言わない選択肢
「はあ?」

 何を言っているんだ、この人は?

「生きてりゃ、誰かに迷惑かけるものだろ? 迷惑かけない人なんているのか? 多分だけど、今の俺って、お前にとって凄く迷惑だろ?」

「分かっているなら、辞めてください」

「嫌だね。お前は迷惑かけないようにしてればいい。俺はお前に迷惑かけまくる」

「バカなんですか?」

 思わず、呆れてそんな言葉が出てしまった。


「何とでも言え。俺は、何を言われてもお前の傍にいるって決めたから……」

「辛くなるかもしれないのに……」

「そうだな、辛いだろうな…… でも、一緒に居たい気持ちの方が強い」

「じゃあ、私の気持ちは? 辛いのは嫌。私は、何も出来ない…… 何も言えない……」

 どうしよう、我慢していたのに涙があふれてくる……


「けして、君の気持ちを否定している訳じゃないよ。周りの人の事を一番に考えて、苦しんで決めたんだから。その思いは、その思いのままでいい。一緒に抱えていきたい…… だから…… 君が言えなくても、俺は言う」

「……」


「君の事が好きだ……」


 向き合った彼の目をじっと見た。こんな気持ちになりたくなかったのに……

「そんな事、言わないで下さい……」

「辛い思いをさせてごめん…… でも、二度と同じ後悔はしたくない。これからの時間を大切にしたい。
 だから、俺は好きと言う選択をした……」

 彼の大きな手が、私を優しく抱き寄せた。それを拒む事が出来ない自分がずるいと分かってる……

 ごめんなさい…… 私は何も言えないよ……

 さっき飲んだsukkyの甘酸っぱさが、まだ口の中で広がっている気がした。
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