「好き」と言わない選択肢
「で、どっちが先に告白したの?」

 私は、興味ないというように、ピザを頬張りながら言った。

「パパよ」
「ママだ」
 同時に二人が言った。

 なんだか、二人の姿が面白かった。そして、パパとママが何を伝えたかったのか少し分かった気がした。
 この時、私は彼と暮らす事を私は選らんだのだと思う。

 もし、彼が大阪へ赴任する前に、自分の気持ちに気付いたとしたら、何か変わっていたのだろうか?
 それでも、私は「好き」だとは言わなかっただろう。
 その言葉が、彼を縛ってしまうから…… 
 本当に、本当にあなたが好きだから、私は言わない……


だけど……

「咲音、好きだよ」

 私は、その声で目覚める……


 彼は、私に沢山の「好き」をくれる。これも、苦しむと知りながら、彼が必死で悩んで決めた選択。

 いつの間にか、彼は、私を咲音と名前で呼ぶようになった…… 正直、嬉しかった……


 会社を辞めて一ヶ月、私の心臓は、徐々に弱くなっていた……
 少し動くだけで息切れがする……

 彼とママが、ほとんど家の事をやってくれている……

「ありがとう」
 と言えば、
「俺も、居候させてもらってるから、お互い様だ。俺が居ると、迷惑だろ?」
 と笑って返ってくる。

「こんな風に、笑う人だと思わなかったな……」

「俺も知らなかった…… クールでも笑ってもカッコいいとか思っただろ?」

「思ってないです」

 そっぽを向くが、顔が赤くなっているのが自分でもわかる。
 確かに、カッコいいんだよな……

「そろそろ、時間だな?」

 彼がTVの電源を入れる。だいたいいつも同じ時間に流れるsukkyのCMを二人で見る。何度見ても、色々な事が思い出され胸が熱くなる。正直、本当に自分が企画した商品なのかと信じられないくらいだ。

 CMを見た後はきまって、達成感と同時に、新商品の提案の話をする。毎回、新な提案が出てくる。この時間が、凄く幸せだ。


「なあ、今日は調子どうだ? 行きたいとこあるんだけど……」

「ちょっとなら大丈夫そう……」

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