ラブ・ジェネレーション
翔琉と再会してから二ヶ月後、
休日のカフェの陽だまりでのこと、
ブラインドを半分降ろした窓の外を老夫婦が手を繋ぎ、ゆっくりとした足取りで通り過ぎていく。
反対側から子犬を連れた小学生がすれ違う、そんな長閑な風景を紅茶のカップを片手に何気に見ていた私に、向かいの席でアイスコーヒーをストローで飲み終えた翔琉が突然思い出したかのように訊ねた、
「そういえば、車なんてよく買えたな」
「なに、急に」
翔琉は私の家が貧乏なのは知っていた、
父親を早くに亡くした母子家庭だし、私は小中高とその苦痛を嫌と言うほど味わってきたからだ、
その金銭的劣等感が私に及ぼした影響は計り知れない、
友達の誘いを断るうちに一人二人と無くし、流行の話題にもついていけない、
それが原因で、いつも明るく振る舞えない暗い影を落としていた。
高校一年生の時、翔琉と付き合い始めて間もなくだったから二学期の始め頃だったろうか、
学校からの帰り道、いつも寄り道もせず真っ直ぐ家に帰る私を翔琉は訝しんだ、
『結衣は寄り道もしないけど、何か家に用事でもあるの?』
『別に、、洗い物と掃除ぐらいかな』
お母さんの仕事は夜がメインで日中は疲れて寝ている、平日は夕方ぐらいに仕事に出て、朝は私が登校する前に帰宅して朝ご飯とお弁当を作ってくれる。
そんなお母さんに代わって私が家事の殆どを任されていた。
特に疑問に感じたことはなかった、私の為にお母さんは時間を惜しんで働いてくれているんだから、私にできることは何でもしようって決めていた。
そんな家庭の事情を男の子に打ち明けたのも翔琉が初めてだった。