ラブ・ジェネレーション
翔琉の背中の傷跡を見た時は、ひょっとしたら事故に遭った男の子は翔琉かもしれないって頭を過ぎったけど、まさかお兄さんだったなんて、
「高校生の時、俺は自転車で通学してただろ、結衣は近いのに自転車が必要なのって聞いたの覚えてる?」
「うん、歩いたって知れてたでしょ、単なるなまくらかなって思った」
その理由は結局聞かずじまいだったね、
「丈瑠の病院に寄る事があったからなんだ、歩いて行くには少し遠かった」
そうか高校時代、翔琉が時々寄り道していた場所は、お兄さんが入院していた病院だったんだ。
その日、家に帰ってお母さんの顔を見た途端、以前にお母さんの驚いた顔を思い出して今日の翔琉の話をした。
「お母さん、翔琉にはお兄さんがいたよ、もう亡くなったみたいだけど」
私の言葉にお母さんの顔色が一気に青ざめた、
「進藤……タケルくん」
「ど、どうして、お母さんが名前を知ってるの?」
「そうか、そんな偶然あるんだね、やっぱり話さなきゃいけないね、待ってて結衣に見せたいものがあるから」
クロゼットの奥から取り出した小さなお菓子の缶の箱を開けると、中には一通の手紙と預金通帳が入っていた。
お母さんは封筒から手紙を取り出してテーブルの上に広げた、
優衣さんからお母さんに宛てた手紙だ、
【 高橋まゆみ 様
不幸な事故以来、長きに渡り息子丈瑠にお力添えを頂きましたこと深く感謝致します、
高橋様からのあたたかなご助力もかかわらず、先日持病の心臓病のため天国へと召されました。
大変失礼とは存じますが、今まで頂いたご支援はお気持ちだけを頂戴し、お返しする事をどうぞお許し下さい。高橋様にも年頃の娘様がいらっしゃると伺っております、私どもへの支援のためさぞかし不憫な想いをさせてしまったとご察しします。高橋さまのご厚意は生涯忘れません、これからはご無理をなさらずどうかご自愛下さい。
進藤優衣 】