ラブ・ジェネレーション
(この曲は、もう20年も昔のバンド仲間が作った曲なんです)
(はいはい、たしかー作詞、作曲は、カケルって名前の人ですねー、どんな人なんですかー)
「今カケルって言わなかった?」
「俺もそう聞こえた、」
車を路肩に停めて、慌てて曲をスマホで検索する、
「カタカナでカケルになってる、それ以外の情報は何も書いてないよ」
歌詞の内容とカケルの名前、まさかお父さんじゃないだろうか、20年前なら時期も一致する?
(歌詞の通り、彼は故郷に恋人を残してミュージシャンになりたくて上京しました、俺と夢が一緒だったんです、でも道半ばで夢を諦めちゃったんです)
(どうして?)
(もともと自分で期限を設けていたみたいなんですけど、地元に残した恋人をこれ以上待たせられない、彼女を幸せにしたいから俺はもう夢を諦めようかなって)
(自分の夢より恋人をとったわけだ、なかなか出来ないです、いい話じゃないですかー)
(そう思いますよね、ところが、いい話じゃなかったんです……)
(えっ、ハッピーエンドじゃないの?)
本当にお父さんならハッピーエンドであるはずがない、優衣さんとは結ばれなかった。
(三年後、地元に戻った時には彼女は既に結婚していました)
(ほんとに? そっか、彼女も待ちきれなかったんですねー、でも三年も音沙汰無しじゃ普通は諦めるかなー、それでこの曲ができたわけだ)
(違うんです、彼を好きな気持ちは変わらなかったけど、彼女にも彼を諦めた理由があったんです)