【電子書籍化】婚約13年目ですが、いまだに愛されていません~愛されたい王女と愛さないように必死な次期公爵~
 シュトラウスとの出会いを経て、フレデリカはよく笑うようになった。
 素直で優しい性格の彼女は、自分が王城内で疎まれていることを敏感に感じ取り、弱々しく内気な少女に。
 王たちはフレデリカを守ろうとしたが、その複雑な立場故に、彼女は徐々に蝕まれていた。
 そんなとき、フレデリカの前に現れたのが、シュトラウスである。
 初めて会ったときには、自身が王女であるにも関わらず、フレデリカはシュトラウスのことを物語の中の王子様のようだと思った。
 こんやく、とはなにかよくわからなかったが、シュトラウスが兄だと思っていいと言ってくれたから、にいさま、と呼んで慕って。
 気がつけば、シュトラウスは大好きなお兄ちゃんになっていた。

「あのね、シュウにいさまがね」
「シュウにいさまと約束してるの!」
「シュウにいさまにもらったんです」

 両親である王や側妃にも、笑顔でそう話すようになり、王たちはほっとした。
 俯きがちだったフレデリカが、こんなにも元気に、明るくなった。
 毎日毎日楽しそうだ。
 シュトラウスが時間を作れず、彼に会えなかった日はむすっとしていることもあるが、そんな姿も愛らしいと思えた。

 フレデリカの笑顔が増えたこと以外にも、確かな収穫があった。
 第二の王家とまで呼ばれるストレザン公爵家の嫡男が、フレデリカを溺愛している。
 その話は王城を超えて、国中の貴族にまで届きつつあった。
 国一番の権力者である王と、それに次ぐ力を持つストレザン家の者。
 その両者に愛されるフレデリカを粗末に扱える者など、いなかった。
 フレデリカに害をなせば、王とストレザン公爵家の両方を敵にまわすことになるのだ。
 王たちの狙い通り、フレデリカはストレザン家という新たな後ろ盾を得て、その立場を盤石なものとした。
 政略結婚ではあるものの、二人はこのまま成長し、いずれは仲のいい夫婦になる。
 彼らに近しいものは、みな、そう期待していた。
< 10 / 183 >

この作品をシェア

pagetop