【電子書籍化】婚約13年目ですが、いまだに愛されていません~愛されたい王女と愛さないように必死な次期公爵~
 灯りを消し、ともにベッドに横たわる。
 シュトラウスに抱き込まれた彼女は、最初こそ緊張した様子だったが、そう時間も経たないうちにすうすうと寝息を立て始めた。
 やはり、疲れていたのだろう。
 フレデリカが困っていそうなら離れようと思っていたシュトラウスだが、彼女が自分の腕の中で眠ってくれたことに安堵した。
 自分は、フレデリカにとって安心できる存在なのだと。そう思えた。



 フレデリカが眠ってくれたことは、素直に嬉しいが……。
 シュトラウスのほうは、しばらく眠れそうになかった。

 触れることをずっと我慢してきた、愛しい人。
 成長後、こうして一緒に眠るのは初めてだった。
 シュトラウスだって、健全な成人男性。
 彼女と同じベッドに入り、抱きしめているこの状況でなんとも思わない、なんの欲もわかないと言えば、嘘になる。
 なんともないなんて言ったら、かなり嘘である。もはや完全に嘘だ。

 それでも、この夜は。
 男のシュトラウスが思う以上に、心身ともに疲弊しているであろう彼女に、これ以上の無理を強いたりはしない。
 シュトラウスは、慈しむようにフレデリカの髪を撫でた。

「ゆっくりおやすみ。フリッカ」




 翌日。
 離れには、大好きな人と迎えた朝に元気いっぱいのフレデリカと、寝不足でしおれるシュトラウスの姿があったとか。
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