【電子書籍化】婚約13年目ですが、いまだに愛されていません~愛されたい王女と愛さないように必死な次期公爵~
 言われるがままにベッドに仰向けになったシュトラウスに、フレデリカがのしかかる。
 婚約者に押し倒される形となったシュトラウスは、「あれ、これ男女逆では?」と思ったが、フレデリカを怒らせたのは自分であるために、下手なことは言えず。フレデリカの次の動きを待っていた。
 しかし、シュトラウスの上に座ったところから、フレデリカは動かない。

「……フリッカ?」

 おそるおそる声をかけてみると、

「ここからどうしたらいいの……?」

 と、涙声が返ってくる。
 勢いでやってはみたものの、この先をどうするかは考えていなかったのだ。
 羞恥やらなにやらでぐすぐすと泣き出すフレデリカを、起き上がったシュトラウスが慌てて抱きしめる。

「すまない……。情けない男で、本当にすまない……。きみに、ここまでさせてしまった」
「ばかあ……ばからうすぅ……!」
「……俺も覚悟を決めるから、ここからは俺に任せてくれないか?」
「優しくしてえ……!」

 べそべそと泣く彼女が、そんなことを言いながらすがりついてくるものだから、シュトラウスからは「んぐっ……」と言葉にもならない声が漏れた。

「っ……。もちろん。大切に、抱かせてくれ」
「ん……」

 唇と唇が、重なり合う。
 先ほどとは体勢が入れ替わり、フレデリカは彼の下でそっと瞳を閉じた。


***


 翌朝は、これまでとは逆で、フレデリカがよろよろで、シュトラウスが元気いっぱいだった。
 フレデリカは、彼がなかなか自分に手を出さなかった理由を、理解した。

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