【電子書籍化】婚約13年目ですが、いまだに愛されていません~愛されたい王女と愛さないように必死な次期公爵~
2章
 時は経ち、フレデリカは18歳に。
 おどおどした気弱な少女だったことが嘘のように、凛とした女性として成長した。
 適度に凹凸のある美しいシルエットに、伸びた背筋。
 フレデリカが歩を進めるたび、ふわふわとした銀の髪が揺れる。
 空のような青い瞳は優雅に細められ、見る者を魅了した。
 所作も王族のそれで、フレデリカとすれ違った者は、その美しさから、ほう、とため息を漏らす。
 側妃の子だからと軽んじられていた少女は、もうそこにはいない。
 自信と気品に満ち溢れた、美しい王女。それが今のフレデリカ・リエルタだ。
 
 ――というのは、王女として振る舞っているときの話で。
 素のフレデリカは、素直で優しいお嬢さんのままである。
 成長し、王女としての自覚も芽生えたフレデリカは、素を出さないよう、隙を見せないよう気を張っていることが多い。
 軽んじられた過去もある彼女だ。普段から王女としての品格を保つことの重要性は、よくわかっていた。
 だから、本来の彼女の姿を知る者は少ない。
 たとえば、親である王と側妃。それから、実の娘同然に愛してくれる正妃。弟二人、幼い頃からの付き人、親友……そして、婚約者。
 フレデリカが本当の笑顔を見せることができる相手は、そのくらいか。
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