【電子書籍化】婚約13年目ですが、いまだに愛されていません~愛されたい王女と愛さないように必死な次期公爵~
「……姉さんは、もう知ってるの?」
「まだ話してないわ。フリッカ、幸せそうなんだもの」

 フレデリカは、幸せな結婚を控えている。
 そんな親友に、こんな話をすることはできなかった。
 優しいフレデリカは、きっと、表情を曇らせる。

 ずっと応援していた、大好きな親友。
 せめてフレデリカだけでも、笑っていて欲しかった。
 たとえ、自分自身は幸福になれないとしても、立場の近い彼女が幸せになるところを、見せて欲しかった。
 生まれに困難があろうとも、他のピースが上手くはまれば幸せになれるのだと、教えて欲しかった。
 
「……お姉さんの結婚前にこんな話、ごめんなさい。フリッカにはいつか私から話すから、まだ秘密にしておいてくれる? 残りの時間を、今まで通り過ごしたいの」
「……わかったよ」
「約束よ?」
「……うん。約束だ」

 ルーナは気丈に振る舞っているが、彼女の意思に反した婚約であることは、アルフレドにも感じ取れた。

 ルーナを返したくない。
 無理な結婚をさせたくない。
 けれど、もう、決まってしまった。

 もしも、自分がもっと早くに決意して、ルーナに婚約を申し込んでいたら、なにか変わっていたのだろうか。
 この地……リエルタで、自分の隣で、姉の親友として、彼女は笑っていられたのだろうか。
 告白していたところで、ルーナとハリバロフがそれを受け入れてくれたとは限らない。
 でも、もしかしたら。自分次第で、ルーナの運命を変えられたのかもしれない。
 いつまでももたついていた自分を非難する気持ちと、後悔。そんなものが、アルフレドをのみこんでいった。
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