【電子書籍化】婚約13年目ですが、いまだに愛されていません~愛されたい王女と愛さないように必死な次期公爵~
「……アル。リエルタの王子、アルフレドか」
「……」
 
 しまった、と思ったが、もう遅かった。

「留学中は、リエルタの王子につきまとわれて困っていたんだろう? あのストーカーめ」
「ストーカーなんかじゃ……!」

 ルーナは、アルフレドをそんな風に思ったことはなかった。
 更に攻撃されることを覚悟で、ルーナはテネブラエの言葉を否定する。
 しかしどうしてか、テネブラエが怒ることはなく。それどころか、上機嫌に笑いだす。

「ははっ……あはははっ……! やっぱりきみは、あの男に洗脳されているんだね。アルフレドなら、これから罰を受ける。だからルーナ。きみはもう、あんな奴のことは忘れて、ここで幸せに暮らしていればいいんだよ」
「……? なんの話……?」
「ああすまない。これはまだ秘密なんだった。きみを狙うストーカー野郎が苦しむと思うと嬉しすぎて、つい話してしまったよ。それじゃあ僕は、仕事に戻るから。愛してるよ、ルーナ」
 
 テネブラエが、ルーナの髪をひと房とって、キスを落とす。
 軽い足取りで部屋から出て行くテネブラエの姿を、彼女は呆然と見送った。

「罰……? 苦しむ……?」

 詳細は、なにもわからない。
 けれど、これからなにかが起きようとしている。
 どうやら、アルフレドに関わることらしいが……。
 アルフレドは、リエルタの第一王子。
 おそらくテネブラエは、リエルタでなにか起こそうとしている。
 そう読み取ることができた。
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