【電子書籍化】婚約13年目ですが、いまだに愛されていません~愛されたい王女と愛さないように必死な次期公爵~
 通常であれば、アルフレド含む王族宛ての手紙などは、王城に届けられる。
 だが、それとは別に、秘密の通信ルートがあった。
 リエルタ内の別の住所に、ある名前宛てに手紙を送ると、この老紳士がそれを回収し、こうして直接渡しにくる。
 王族宛ての手紙であると知られるとまずい場合などに使われる、ごく一部の者しか知らない宛先だ。
 緊急時の極秘ルート、といったところか。
 そんなわけだから、アルフレドは、この手紙を無視するわけにはいかなかった。

 老紳士を見送ったアルフレドは、すぐに手紙を開封し、中身に目を通した。
 差出人は不明。中に入っていたのは、便せんが1枚。
 内容も、フレデリカの結婚を祝福するもので、いたって普通に見える。
 しかし、ただそれだけなら、このルートを使うわけがない。
 アルフレドは、差出人の真意を読み取ろうと、手紙を読み進めていく。
 後半には、フレデリカの結婚式の際、王城の庭を民衆に解放すること、二人がバルコニーに立つことについて言及されていた。
 
「『二人の晴れ姿をみんなに見てもらえることを、嬉しく思います。けれど、庭を解放するとなると、警備はしっかり行わないとですね』か……」

 当たり前のことが書いてあるのだが、この部分が引っかかった。
 わざわざ極秘ルートを使い、アルフレドに届けられた一通。
 その中に、場所やタイミングをはっきり示したうえで「警備はしっかり」という言葉があったのだ。
 なんの意味もないとは、思えない。
 これはおそらく、密告だ。
 
 フレデリカとシュトラウスの結婚式で、二人が民衆に姿を見せようとバルコニーに出たとき、なにかが起こる。
 その「なにか」は一般解放された庭から発生する。
 そんな風に考えることもできる。
 そこから、アルフレドが導きだした答えは――。

「……結婚式の日、姉さんたちが、狙われる?」
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