【電子書籍化】婚約13年目ですが、いまだに愛されていません~愛されたい王女と愛さないように必死な次期公爵~
 フレデリカたちの結婚式の日まで、残り一か月を切っていた。
 最初の一通のあとも、アルフレドの元には、ぽつぽつと手紙が届き続けている。
 そのどれもが、白い封筒に青いシールで封がされただけの簡素なもので、決まって、緊急時用のルートが使われていた。
 中身はいつも似たり寄ったりだが、2通目以降は、結婚を前にしたフレデリカを気遣う内容が増えていった。
 最新のものでは、シュトラウスへの言及はほぼなく、フレデリカだけに焦点があてられている。
 それから、言葉の選び方を変えながらも、絶対に書かれていることがあった。

「『王女様の結婚式となると、きっと、警備も大変でしょう』と。差出人は不明のままですが、毎回、二人がバルコニーに出ることと、庭の警備について言及されています」
「ふむ……」

 フレデリック王が、顎に蓄えられた髭に触れた。
 王城内の会議室の1つに、そうそうたるメンツが集まっていた。
 フレデリック王、近衛兵のトップ数人と、シュトラウス。
 書類を持ち、黒板の前に立って話を進めるのはアルフレドだ。
 ここは、警備に関する会議が行われることの多い場所で、王城の地図や構造などに関する文書もここに揃っている。
 彼らの前に、アルフレドは今までに届いた手紙を並べ、自身の見解を述べていく。

「一連の手紙は、同じ人物からの密告であると考えています。はっきりとは書かれていませんが、おそらく、結婚式の際、姉さん……第一王女フレデリカは、何者かに狙われるのでしょう」

 密告と思われる手紙を受け取ったアルフレドは、最初の一通の時点で、王や近衛兵への報告を開始していた。
 以降、手紙が届くたびにこうして集まり、それぞれの考えをすり合わせている。
< 140 / 183 >

この作品をシェア

pagetop