【電子書籍化】婚約13年目ですが、いまだに愛されていません~愛されたい王女と愛さないように必死な次期公爵~
 愛する人にじっと見つめられ、デートがしたいとおねだりされ。
 シュトラウスは、折れる寸前になっていた。
 それでも必死に、ダメだと繰り返す。
 フレデリカがまだ5歳だった頃から、彼女を守り続けてきた男だ。意思は固かった。

「ダメ、だ……。きみの安全が、最優先だから……。もうしばらく、我慢してくれないか。落ち着いた頃になら、いくらでも一緒に行くから」
「……ほんと?」
「ああ、約束する」
「やったあ! 言ってみるものね!」
「フリッカ……?」

 シュトラウスから「いくらでも一緒に行く」という言葉を引き出し、フレデリカはご機嫌だ。
 おねだりしてはいたが、フレデリカだって、街へのお出かけはやめたほうがいいとわかっていた。
 けれど、夫となった彼にわがままを言ってみたくて、こんなことをした。
 ……ちなみに、一緒に行きたかったのは、本当だ。
 ダメだと返されるのは想定内だったが、予想以上の収穫を得たフレデリカはるんるんだった。
 そんな彼女を見て、シュトラウスは「やられたな」と1つ溜め息をつく。
 
 フレデリカはもう、彼に話しかけること、誘うことを、恐れたりしない。
 シュトラウスも、彼女から距離をとるために断ることなど、もうしない。
 今回はフレデリカのおねだりを却下したが、それは、フレデリカの安全を第一に考えてのことだ。
 シュトラウスはいつだって、フレデリカにとってなにが一番いいことなのかを、考えている。
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