【電子書籍化】婚約13年目ですが、いまだに愛されていません~愛されたい王女と愛さないように必死な次期公爵~
「……なにがあったのかしら」

 王城中庭の、噴水前のベンチにて。
 心配げに、小さくため息をついてそうこぼすのはルーナだ。青く美しい瞳には、憂いの色が浮かんでいる。
 ここはハリバロフ王国からの留学生やその付き人も自由に過ごしていいエリアで、ルーナお気に入りの場所だった。
 そんなルーナの隣に座るのは、この国の第一王子・アルフレド。

「姉さんのこと?」
「ええ……」

 そこで一度は言葉を切ったルーナだったが、ぽつぽつと、これまでの出来事を話し出す。

「実はね、私、フリッカに、シュトラウスにもっとアタックすればいいって言ってしまったの。シュトラウスがフリッカを可愛く思っているのはわかっていたから、フリッカから動けば、進展するはずだって。……そう思って」

 苦し気に紡がれる言葉。
 ルーナがあまりにも辛そうにしていたから、アルフレドは思わず、彼女の背に触れそうになって――触れる直前に、そっと手を引っ込めた。

「最初はね、上手くいってるみたいだったの。二人でおでかけもして、フリッカは嬉しそうだったわ。でも、最近はシュトラウスについてなにも話してくれないの。私から聞いても、笑って誤魔化されてしまって。あんなに好きだったはずなのに、シュトラウスに近づかないようにしてるみたいだし……」

 妹扱いの一件以降も、フレデリカとルーナのガールズトークは続いていた。
 今までなら、恋する王女のフレデリカが、シュトラウスについてお喋りしてくれたのだが、最近はそれがない。
 ルーナから話をふっても、笑って誤魔化されてしまう。
 王女としてのフレデリカはいつもと変わらず凛としているが、友人としての素の彼女は、どこか元気のないままだった。

 本人が話してくれないのだから、本当のところはわからない。
 でも、もしかしたら――シュトラウスとのあいだに、なにかあったのではないか。
 フレデリカが傷ついてしまうようなことが起きたのではないか。
 ルーナが調子に乗って「もっと攻めろ」なんて言ったせいで、忙しいシュトラウスに拒絶されてしまった可能性もある。
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