【電子書籍化】婚約13年目ですが、いまだに愛されていません~愛されたい王女と愛さないように必死な次期公爵~
 一方、メインのバルコニーにて、隣国の辺境伯令嬢・マリエルにキスをされたシュトラウスは、お説教モードに入っていた。

「マリエル……。ハリバロフの文化のことは俺もよく知っているが、ここはリエルタだ。リエルタに合わせてくれ」
「そうだったわね……。ごめんなさい、シュトラウス」

 しゅんとする妖艶な美女の隣で、シュトラウスは呆れたようにため息をついた。
 隣にいる彼女は、「王女様の婚約者なのよね。頑張って」と、エールを送るつもりでシュトラウスの頬にキスをしたのだ。

「改めて言うが、この国では、キスは恋人や配偶者など、特別な間柄でしか行わない。頬へのものであっても同様だ。不要な誤解やトラブルを生まないよう、リエルタの文化に早めに慣れるように」
「肝に銘じておくわ……」

 隣国の美女にキスされたシュトラウスであるが、彼は動揺していなかった。
 国境に領地を持つ彼は、ハリバロフの文化に特別明るかったからだ。
 フレデリカももちろん知ってはいるのだが、衝撃の光景すぎて、異国文化については頭から飛んでいた。
 ちなみに、キスされた位置は頬である。距離があったため、フレデリカからは、唇同士に見えてしまっていた。
< 54 / 183 >

この作品をシェア

pagetop