【電子書籍化】婚約13年目ですが、いまだに愛されていません~愛されたい王女と愛さないように必死な次期公爵~
 婚約後、シュトラウスは王城に住むようになった。
 正確にいえば、王城敷地内の離れの一棟、であるが。
 ストレザン公爵家は、王国の北側に広大な領地を持ち、その地においては王に等しい権力を有していた。
 北は、隣国のハリバロフ王国とも接しており、国境の守備と交流・交易を担うストレザン公爵家を第二の王家とまで呼ぶ者もいる。
 シュトラウスはそんな家の跡継ぎであるが、今は父が領地を治めており、当主交代もまだ先だ。
 王家と、それに次ぐ権力を持つ家の関係を強化する意味もあり、シュトラウスはしばらくのあいだ王城預かりとなったのだ。
 いずれはストレザンの領地に帰るが、10代後半には、王城勤めになる予定でもある。
 すっかりシュトラウスに懐いていたフレデリカは、彼が王城に住むことを大いに歓迎し、喜んだ。


 王城での暮らしは、なかなかに大変なものであった。
 扱いは悪くないのだが、とにかく教育が厳しいのだ。
 公爵家のそれも、12歳の子供には過酷なものだったが、王城ではさらにしごかれた。
 シュトラウスに就く講師はみな、本来ならば王族の教育を務める者たち。
 もちろん、仕事は王子王女の教育だけではないのだが――彼らは、持て余していたのである。
 正妃とのあいだにはなかなか子ができず、側妃とのあいだに生まれた第一子もまだ5歳。
 授業は始まっているものの、本格的な指導はまだだった。

 そこに、シュトラウスの登場である。
 超名門公爵家の嫡男で、王女の婚約者で、12歳。
 講師陣は、シュトラウスを王女の夫として、公爵としてふさわしい男に育て上げてみせると、熱を上げた。
 王子も王女も生まれず、ずっと待機していた分の熱が、シュトラウスに向けられたのである。
 まあ、言ってしまえば、とばっちりであった。
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