【電子書籍化】婚約13年目ですが、いまだに愛されていません~愛されたい王女と愛さないように必死な次期公爵~
 シュトラウスは話した。
 婚約当時、まだ幼かったフレデリカが、いつか他の誰かを望んだとき、手を放そうとしていたことを。
 そのために、フレデリカを縛らないよう、距離をとっていたことを。
 
 シュトラウスの、懺悔にも近い告白。
 フレデリカは、そんな話、一度も聞いたことがなかった。
 ある時期から彼がそっけなくなったことも、自分を妹扱いしたことも、触れてくれないことも……全部全部、そのためだったと知ったフレデリカは――
 
「なに、それ? 私の気持ちはどうなるの!? ばかあ! ばかばか!」

 ぽろぽろと涙をこぼしながら怒った。

「私は……! 私はずっと、シュウのことが好きだったのに! 私になんの確認もせず、そんな……。バカ! バカ! バカ! ばかあ!」
「返す言葉もないよ……」

 フレデリカは、「バカ!」と繰り返しながら、ぽかぽかとシュトラウスの胸を叩く。

「……結局、私のことをどう思ってるの?」

 目の前の男をじっと睨みつけるが、涙に濡れた美しい瞳では、なんの迫力もなかった。
 フレデリカに詰め寄られたシュトラウス。
 少しためらう様子を見せてから、意思を固めた。
 女性のフレデリカにここまで言わせたのだ。シュトラウスが逃げていいわけがない。
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