【電子書籍化】婚約13年目ですが、いまだに愛されていません~愛されたい王女と愛さないように必死な次期公爵~
「彼女には、リエルタの文化に合わせるよう注意した。……まさか、あの場面をきみが見ていたとは思わず、誤解させてすまなかった」

 そう言って、シュトラウスが頭を下げる。
 キスに関する誤解は解けたものの、それ以外に関しては、フレデリカのお怒りは絶賛継続中だ。
 えい、とシュトラウスの頭に軽く手刀を落としてから、

「シュトラウス・ストレザン」

 と、王女然とした声で、婚約者の名を呼んだ。

「私は、あなたが私の気持ちを無視して、自分の考えだけで動いていたことに怒っています。でも、あなたの愛が欲しいという想いも消えません。今から私が挙げることをしっかり改善してくれるなら、許すことも考えます」
「……はい」

 フレデリカは、彼を許すための条件をあげていく。

「今後は、私に変な遠慮はしないこと。……愛してるっていうなら、ちゃんと愛して?」
「……ああ。約束する」
「絶対放さないで」
「ああ」
「放してって言われても、放さないで」
「……うん」
「他の誰にも渡さないで」
「うん」
「そばにいて。私をさけたりしないで。逃げないで」
「これからは、そんなことはしない」
「もし破ったら、今度こそ他に好きな人を作って、婚約解消しちゃうんだから。私、もう、ストレザン家の後ろ盾がなくたって大丈夫なんだよ?」
「……そうならないよう、必死に努力するよ。きみに捨てられたくない」

 フレデリカが、そっとシュトラウスの頬に触れる。

「……愛してるって、教えて?」

 真剣な瞳が、彼を射抜いた。
 見つめ合い、どちらともなく微笑み合って――シュトラウスは、大きな手で彼女の頬を包み込み、口づけを落とした。

「フリッカ。もう、きみから逃げないと誓うよ」
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