【電子書籍化】婚約13年目ですが、いまだに愛されていません~愛されたい王女と愛さないように必死な次期公爵~
4章
 唇同士が触れ合ったあとも、髪に、額に、頬に、シュトラウスからキスの雨が降り続ける。
 いつまでも終わらないようにも思えるそれが、くすぐったくて、嬉しいけど恥ずかしくて。
 
「あ、あの、シュウ?」

 やめて欲しいわけではないが、フレデリカはついに声をあげた。
 長いこと婚約者をやってきたが、こんなこと、これまでに一度もなかったのだ。
 たしかにちゃんと愛してとは言ったが、あまりの変わりように、フレデリカが戸惑ってしまうのも無理はない。
 フレデリカの声を聞き、シュトラウスも一度は動きをとめたのだが――

「フリッカ。俺はもう、逃げないと決めたんだ」

 はっきりとした口調でそう言うと、フレデリカの手を取って、やはりキスを落とした。

「ひえ……」

 シュトラウスはもう逃げない。遠慮しない。存分にフレデリカを愛する。
 年上婚約者の本気を前に、フレデリカは顔を赤く染め上げた。
 嬉しい。とても嬉しいけれど、年下の女性で、触れ合いにも不慣れなフレデリカはもういっぱいいっぱいだ。
 今にも湯気が出そうなフレデリカが可哀相になってきたのか、シュトラウスはしゅんと眉を下げる。
 
「もう少し、控えたほうがいいか?」
「……いえ、だいじょうぶ、です」
「……もしもこの先、やりすぎだ、怖い、嫌だ、と感じることがあったら、ひっぱたいてもらって構わない」
「はひ……」

 この先。やりすぎ。
 
 つまり、まだまだ先があるってこと……!?

 そう受け取ったフレデリカは、シュトラウスの腕の中でぷるぷると震えた。
 現時点で受け止めきれていないのに、まだ先があるなんて。
 
「……もう逃げないとは言ったが、俺はきみが嫌がることをするつもりはないんだ。無理そうなら、嫌だと言ってくれても……」
「いや、じゃない、です。びっくりしちゃっただけで、嬉しいから……。やめないで?」
「……!」
< 92 / 183 >

この作品をシェア

pagetop