【電子書籍化】婚約13年目ですが、いまだに愛されていません~愛されたい王女と愛さないように必死な次期公爵~
「ね、ねえさ……。ねえ、さん……」

 今にも砂になりそうなアルフレドの肩を、ルーナがぽんと叩く。

「ルーナ! きみからも何か言ってやって……」

 振り返ったアルフレドの瞳に移るのは、哀れみとも慈愛ともとれる、ルーナの笑みだった。

「祝福しましょう? 弟くん……」
「くっ……ううっ……。シュトラウス、姉さんは本当に嫌がっていないんだな?」
「アル。大丈夫だと言っているでしょう?」

 めっ! というフレデリカの声が、聞こえてきそうだった。
 今にも頭を抱えだす勢いのアルフレドだが、ルーナに「ほら、話を進めないと」と言われてハッとし、気を取り直す。

「姉さんは一度、父上たちのところへ。シュトラウスはこのままここにいて欲しい」

 アルフレドは元々、フレデリカの様子の確認と、この言伝のためにここに来たのだ。
 ようやく落ち着きを取り戻したアルフレドだが、名残惜しそうに見つめ合うフレデリカとシュトラウスの姿を前にして、黒いオーラが滲んでいる。

 父の元に向かうため、ソファから降りようとするフレデリカに、シュトラウスが耳打ちをした。
 アルフレドとルーナにその内容は聞こえなかったが、顔を真っ赤に染め上げたフレデリカが、

「じゅ、準備ができたら行きます!」

 と勢いよく返し、逃げるように部屋から出て行ったものだから、アルフレドがまとうオーラはさらにどす黒くなるのだった。
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