【電子書籍化】婚約13年目ですが、いまだに愛されていません~愛されたい王女と愛さないように必死な次期公爵~
「シュトラウス……。姉さんになにを言った……?」

 フレデリカを見送ったアルフレドは、ゆっくりとシュトラウスを見やる。
 ぎぎぎ、と音がしそうな動きだった。

「……今晩、俺の離れに泊まらないかと誘いました」
「姉さんに手を出す気か!? 怖い目に遭ったばかりなんだぞ!?」
「なにもしません。……ただ、愛しい人と一緒にいたいのです」
「男の言う『なにもしない』なんて信じられるか!」

 その後も、アルフレドは「そんなの信用できない」といった言葉を繰り返している。
 アルフレドの言うことももっともだが、シュトラウスは本当になにもしないつもりだった。
 ただ、フレデリカと一緒にいたいだけ。
 ようやく触れることのできた愛しい人と、共に眠りにつきたいだけだった。
 自分の想いに素直になったシュトラウスは、もう、フレデリカを遠ざけたりしない。
 その腕で、しっかりと彼女を繋ぎ留める。

「アルフレド様。俺はもう、フリッカを悲しませたりしません。どうか、彼女と共に過ごすことを認めていただけませんか」
「っ……! 別に、反対してるわけじゃ……。姉さんはずっとお前のことが好きだったし……」

 バツの悪そうなアルフレドだったが、続くルーナの言葉でかあっと顔を赤くする。

「大好きなお姉さんを取られて、悔しいのよねえ?」

 どうやら、図星だったようだ。
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