【電子書籍化】婚約13年目ですが、いまだに愛されていません~愛されたい王女と愛さないように必死な次期公爵~
「……フリッカは、ご家族に愛されているのですね」
「当たり前だろ! 姉さんは……僕の、大切な……」

 そこまで言うと、アルフレドは言葉に詰まってしまう。
 アルフレドだって、フレデリカがずっとシュトラウスを追いかけていたことは知っている。
 だから、二人の心が繋がったことは、アルフレドにとっても喜ばしいことだった。
 でも、大好きな姉を他の男に取られた悔しさだって、確かに存在している。
 二つの気持ちのあいだで揺れ動き、アルフレドは俯いた。

「アルフレド。そんな顔しないで?」
「……わかってるよ。祝福すべきだって」

 ルーナはアルフレドの前に立ち、彼の手をそっと握る。

「……約束していたわよね。このときが来たら、私が慰めてあげるって。ね、弟くん?」
「なぐさ、める……?」

 ルーナの言葉に反応し、アルフレドが顔を上げた。
 慰める。慰めるとは……?
 アルフレドの脳内に、様々なシチュエーションが描かれていく。
 ルーナによる膝枕、あーん、ハグ、頭を撫でられたり……。言葉にはしにくいことだったりと、様々な妄想が駆け巡った。
 
 二人のやりとりを見ていたシュトラウス。
 彼には、今のアルフレドがなにを考えているのか、なんとなく想像できた。
 しかし「慰める」発言をしたルーナといえば、「明日は一緒にクッキーを焼いてみるのはどうかしら?」とのほほんとしている。
 第一王子は、今日も隣国の姫に振り回されていた。

「アルフレド様……」

 シュトラウスの、見守るような生暖かい瞳。
 自分がフレデリカと想いを通じ合わせた途端、この余裕である。
 これにはやはり、アルフレドはぶちっといった。

「シュトラウス……! やっぱり嫌いだお前のことなんて!」
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